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無機化合物の2つの基本構造の共存と制御を達成 ― 環境浄化や人工光合成の実現に向けた新たな材料設計指針を提示 ー

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科 教授 髙村仁
研究室ウェブサイト

【概要】

NaCl(塩化ナトリウム)に代表される岩塩型構造※1とCaF2(フッ化カルシウム)に代表される蛍石型構造※1は、無機化合物において、最も基本的な結晶構造です。また、岩塩構造の層(岩塩層)を持つ化合物や蛍石型構造の層(蛍石層)を持つ化合物も数多く知られています。

京都大学大学院工学研究科の加藤大地 助教、阿部竜 同教授、陰山洋 同教授、東京工業大学理学院化学系の八島正知 教授、大阪大学大学院工学研究科の佐伯昭紀 教授、東北大学大学院工学研究科の高村仁 教授らの共同研究グループは、この2つの構造ユニットを共存させ、制御できることを発見しました。同グループは、光触媒※2として知られていた酸塩化物Bi12O17Cl2の構造解析を行い、蛍石型構造に似た構造を持つ蛍石層(蛍石ユニット)の中に部分的に岩塩型構造に似た構造を持つ岩塩ユニットが内包されることで、波打った構造を有することを見出しました。加えて、フッ素を挿入する反応を行い、岩塩ユニットと蛍石ユニットの複合パターンを変化させ、構造を平坦化させることで光触媒活性が最大6倍と大幅に向上しました。本成果は、無機化合物の新しい構造の構築と制御法を示したものであり、今後、この2つの基本構造を自在に組み合わせることが可能になれば、新しい機能性材料の開発につながることが期待できます。

本成果は、2022年8月2日(現地時刻)に国際学術誌「Advanced Functional Materials」のオンライン版に掲載されました。

岩塩型構造に似た構造を有する蛍石ユニット(オレンジ色の部分)と蛍石型構造に似た構造を有する岩塩ユニット(水色の部分)が複合した初の層状酸塩化物Bi12O17Cl2とフッ素挿入反応による岩塩/蛍石ユニットの再配列。岩塩/蛍石ユニットの再配列により、Bi12O17Cl2の波打っていた層が平坦になり、光触媒活性が向上した。

【用語解説】

※1 岩塩型構造、蛍石型構造:
岩塩型構造や蛍石型構造は、イオン結晶を代表する結晶構造です。両者の構造では、陽イオンの配置は同じ立方最密充填で並んでいるのに対して、陰イオンは蛍石型構造で四面体間隙サイト、岩塩型構造では八面体間隙サイトを占有しています。

※2 光触媒:
光触媒は、光照射下で触媒作用を示す(化学反応を促進する)物質で、通常の触媒プロセスでは困難な化学反応を常温で進行させることができます。例えば、光触媒を利用することで人間に有害な有機物や細菌を分解し、大気や水質の浄化、抗菌や除菌などに利用できます。また近年、地球温暖化や化石資源の枯渇によるエネルギー問題から、化石資源に代わる新たなエネルギー資源の開発の重要性が増しています。光触媒と太陽光のエネルギーを利用した人工光合成は、石油資源に代わるクリーンなエネルギー製造方法として大きな注目を集めています。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

<研究内容について>
大学院工学研究科 知能デバイス材料学専攻
教授 髙村 仁
電話 022-795-3938
E-mail takamura*material.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

<報道関係のお問い合わせ>
東北大学大学院工学研究科 情報広報室
担当 沼澤 みどり
電話 022-795-5898
E-mail eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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