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高速な空気の流れをリアルタイム計測 従来比20倍速を実現 - 変化する流体に呼応するアクティブ制御に期待 -

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科 航空宇宙工学専攻
准教授 野々村拓
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 感度の高い観測点の最適な組み合わせを選択して、計測する手法「疎点解析粒子画像流速計測法(スパースプロセッシングPIV) 注1を実証するため、リアルタイム高速度カメラを組み込んだ風洞実験装置を製作
  • 従来の「粒子画像流速計測法(PIV)」注2では不可能であった高速な流体の流れのリアルタイム計測に成功
  • 2000ヘルツ(Hz)での流体の流れのリアルタイム計測の成功は世界初
  • 流体力学に限らず様々な分野でのリアルタイム観測とフィードバック制御への応用に期待

【概要】

空気や水などの流体の流れの速度場の計測は、現象の理解やその制御のために重要です。特に流体の中でリアルタイムに何が生じているかを把握し、制御することが期待されています。流体の流速の計測によく用いられる方法として、流速の面情報が得られる粒子画像流速計測法(PIV)があります。しかし、画像解析技術を基にした計測方法のため、高速な空気の流れでは画像解析に多くの時間がとられ、リアルタイム計測ができませんでした。

東北大学大学院工学研究科の野々村拓准教授、産業技術総合研究所省エネルギー研究部門の中井公美研究員(元東北大学特任助教)らの研究グループは、この課題を解決するため、2021年に「低次元モデル」注3と「センサー位置最適化技術」注4を組み入れた疎点解析粒子画像流速計測法(スパースプロセッシングPIV)を提案しています。この度、リアルタイム高速度カメラを組み込んだ風洞実験装置を製作し、実際にリアルタイム計測が可能であることを実証しました。

この技術には汎用性があり、画像解析などを伴う解析時間がかかる計測手法に対して低次元モデルと最適化を組み合わせることで解析するデータ量を減らして処理時間を短縮できることから、流体力学に留まらず様々な分野でのリアルタイム計測とそれに基づく制御が可能になると期待されます。

本研究成果は、2022年8月29日にドイツの科学誌「Experiments in Fluids」のオンライン版で公開されました。

図1 疎点解析粒子画像流速計測法(スパースプロセッシングPIV)の概要 上:PIV(粒子画像流速計測法) 下:スパースプロセッシングPIV(疎点解析粒子画像流速計測法)

【用語解説】

注1 疎点解析粒子画像流速計測法(スパースプロセッシングPIV)
2021年7月に研究グループが提案した、少数の疎な解析点でのみ粒子画像流速計測法を実施し、リアルタイムに全体場を推定する方法。低次元モデルとセンサー位置最適化技術を活用している。通常の粒子画像流速計測法では粒子の発光にレーザー、撮像に高速度カメラを利用するが、疎点解析粒子画像流速計測法ではレーザーとリアルタイム高速度カメラを利用する。

注2 粒子画像流速計測法(PIV)
流体中に含まれる粒子を撮像した粒子画像により、非接触で2次元平面内の速度および方向を求める流体計測手法である。一般的に画像相関解析を用いて粒子群の移動量を求めるため、解析に時間がかかる。

注3 低次元モデル
本来複雑な現象をその大まかな特徴に限定して表現するように簡略化したモデル。大勢に影響の小さい詳細な情報を切り捨てる代わりに、計算コストを下げることができる。

注4 センサー位置最適化技術
センサー位置最適化モデルに対して、感度の高い観測点の組み合わせを選択する方法。厳密には組み合わせ問題となり、計算量爆発を起こすため、問題を緩和して実用的な観測点の組み合せを探す。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

<研究に関して>
東北大学大学院工学研究科 准教授 野々村 拓
電話 022-795-7897
E-mail nonomura*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

< 報道に関して >
東北大学大学院工学研究科情報広報室 担当 沼澤 みどり
電話 022-795-5898 
E-mail eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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