2022年 | プレスリリース・研究成果
「貼るワクチン」にマイクロニードルポンプを搭載 ~注射と同等以上の免疫効果を動物実験で確認~
【本学研究者情報】
〇大学院工学研究科 ファインメカニクス専攻
教授 西澤松彦
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 流れ(電気浸透流)を発生するマイクロニードルポンプ[1]をワクチン接種に応用
- モデルワクチンでのマウス実験では血液中の抗体(IgGおよびIgE)が皮下注射と同等以上に産生することを確認
- 別途開発しているバイオ発電パッチ[2]と組み合わせて電源を含むオール有機物の使い捨て型ワクチンポンプパッチの実現を目指す
【概要】
皮膚の表層にはランゲルハンス細胞(注1)による優れた免疫システムが備わっており、ワクチン投与の効果が高いと期待されています。東北大学大学院工学研究科および高等研究機構新領域創成部の西澤松彦教授のグループは、"痛くない"マイクロニードルポンプによる皮膚内ワクチンの免疫効果を、マウスによる動物実験で検証しました。
痛みを感じない短針が多数並んだマイクロニードルは、1mmより薄い皮膚表層へのワクチン投与(皮膚内ワクチン)に適した"貼るワクチン"として注目されています。研究グループは、多孔性のポーラスマイクロニードルに「流れ(電気浸透流)」が発生する性質を付与した「マイクロニードルポンプ」を開発し、ニードル内に充填したワクチン溶液を電気的に放出することに成功しました。そして、モデルワクチン(OVA)をマウスに接種し、血液中の抗体(IgGおよびIgE)が効率よく産生することを確認しました。人々を注射の痛みから解放し、医療従事者でなくとも簡便に行える"貼るワクチン"の適用拡大への貢献が期待されます。
本成果は、2022年8月24日に薬剤送達に関する専門誌Journal of Drug Delivery Science and Technologyで公開されました。
マイクロニードルポンプが生み出す電気浸透流によって高効率の皮膚内ワクチンを実現
【用語解説】
(注1)ランゲルハンス細胞
表皮に多く存在する樹状細胞で、抗原を効率よく取込み、リンパ節へ遊走してTリンパ球に提示することによって免疫応答を引き起こす。
[1]東北大学プレスリリース 2021年1月29日
"貼る注射「マイクロニードルポンプ」を開発"
[2]東北大学プレスリリース 2022年8月22日
"O₂タンク内蔵!ウォータープルーフ仕様のバイオ発電パッチを開発"
問い合わせ先
< 研究に関すること >
東北大学 大学院工学研究科 ファインメカニクス専攻
教授 西澤 松彦
TEL:022-795-7003
E-mail: nishizawa*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
< 報道に関すること >
東北大学工学研究科・工学部 情報広報室
TEL:022-795-5898
E-mail: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
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