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リンパ行性薬剤送達法と全身放射線照射を併用した新たながん転移治療 転移リンパ節と遠隔転移の腫瘍増殖抑制に効果

【本学研究者情報】

〇大学院医工学研究科 教授 小玉哲也
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • リンパ行性薬剤送達法(LDDS)注1と全身放射線照射の併用療法は、転移リンパ節と肺転移の腫瘍増殖を抑制し、単独療法より治療効果が高かった。
  • 新規併用療法は、腫瘍免疫を総合的に活性化することも明らかになった。
  • 新規併用療法は転移リンパ節と遠隔転移に有用であり、 近い将来、 がん患者に対する臨床応用が期待される。

【概要】

がん転移初期のリンパ節に抗がん剤を直接注入するリンパ行性薬剤送達法は、抗がん剤を血管から投与する全身化学療法に比べると使用薬剤量が1/1000~1/10000と少なくすむ上に、 リンパ節転移がんに対して優れた抗腫瘍効果があります。その一方で全身放射線照射は、 自然免疫と獲得免疫の両方を誘導することで、免疫系と腫瘍の微小環境を変化させて抗腫瘍効果を高めることが知られています。

東北大学大学院医工学研究科腫瘍医工学分野の空 翔太 大学院生修了生(現・島津製作所)と小玉哲也教授らの研究チームは、リンパ行性薬剤送達法による転移リンパ節の局所的化学療法を遠隔転移の予防および治療へと拡大する治療戦略として、全身放射線照射(総線量1.0Gyのガンマ線1回照射)とリンパ行性薬剤送達法の併用療法の治療効果を検討しました。リンパ行性薬剤送達法では、先行研究で治療効果の増加が確認されている高浸透圧・高粘度溶媒で調整した微量の抗がん剤を用いました。その結果、新規併用療法では、それぞれの単独の治療法に比べて転移リンパ節と肺転移の抗腫瘍効果が高く、全身免疫をも総合的に高めることが明らかになりました。この結果から、リンパ行性薬剤送達法と全身放射線照射との併用療法は、リンパ節転移や遠隔転移の治療効果を高め、近い将来、がん患者に対する臨床応用が期待される有望な治療法です。

本研究成果は、2022年9月3日 Cancer Science誌(電子版)に掲載されました。

図1.転移リンパ節の摘出後(ex vivo)発光強度は、全身放射線照射とリンパ行性薬剤送達法の併用群(TBI + LDDS)が最も低く、次いで全身放射線照射群(TBI)、リンパ行性薬剤送達法群(LDDS)であり、これら全ての群は対照群(Non-treatment)より有意に低いレベルを示した(A)。TBI群およびTBI + LDDS群の肺におけるex vivoの生物発光強度は、Non-treatment群に比べ統計的に有意に低かった(B)。

【用語解説】

注1.リンパ行性薬剤送達法(LDDS):リンパ節に直接薬剤を注射する方法。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医工学研究科
腫瘍医工学分野
教授・小玉 哲也 (こだま てつや)
電話番号:022-717-7583
Eメール:kodama*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(取材に関すること)
東北大学大学院医工学研究科
Eメール:bme-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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