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スピン熱伝導物質のナノシート化に成功 ~熱の流量を操る「熱伝導可変材料」の開発を目指して~

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科 応用物理学専攻
助教 寺門信明
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 世界で初めて、スピン熱伝導物質*1)をナノシート*2)化することに成功
  • 熱伝導可変材料の開発や、効率的な排熱とその再利用に向けた熱制御(マネジメント)*3)デバイスへの応用に期待

【概要】

ナノメートル(nm)*4)のサイズで集積化が進む電子デバイスにおいて、熱の蓄積や温度変動はデバイスの信頼性や性能を低下させる厄介者です。しかし見方を変えれば熱や温度差は貴重なエネルギー源と考えることもできます。厄介者の熱を効率良く逃がし、再利用するためには、素早く一様に排熱することに特化した既存の熱マネジメント材料に加えて、熱の流量を制御できる熱伝導可変材料の開発が必要です。

東北大学大学院工学研究科応用物理学専攻の藤原研究室を中心とする研究グループは、アルカリ溶液を用いた簡便な化学的手法で厚さ数ナノメートルのスピン熱伝導物質の開発に成功しました。このナノシートの室温での熱伝導は、電気的に金属並みの高い状態とガラスレベルの低い状態で制御が可能と予想されるため、熱の流量を制御できる熱伝導可変材料や効率的な排熱と再利用に向けた熱制御デバイスへの応用が期待されます。

本研究成果は、英国学術出版大手シュプリンガー・ネイチャーが発行する二次元物質と応用に関するオンライン科学誌「npj 2D Materials and Applications」に2022年10月13日に掲載されました。

スピン熱伝導物質La5Ca9Cu24O41のナノシートの透過型電子顕微鏡像

【用語解説】

*1 スピン熱伝導物質:電子スピン*6)由来の高い熱伝導性を示す物質。マグノン*5)などが熱キャリアとして働く。La5Ca9Cu24O41やSrCuO2などは室温においても金属に匹敵する高い熱伝導性と異方性を示す。

*2 ナノシート:厚さ数ナノメートル*4)以下のシート状物質。

*3 熱制御:熱の流量、方向、温度分布などを時間的、空間的に操る技術。

*4 ナノメートル:1 ナノメートル(nm)は1メートルの10億分の1。髪の毛の太さの約10万分の1に相当。

*5 マグノン:電子スピンを小さな棒磁石とすると、それを半回転させた状態。磁石が作る波(スピン波)を量子力学的に扱った準粒子として扱われ、電子スピンの配列上を動く。

*6 電子スピン:電子が持つ、自転に相当する角運動量。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

< 研究に関して >
東北大学大学院工学研究科 応用物理学専攻
助教 寺門 信明(テラカド ノブアキ)
電話 022-795-7965
E-mail nobuaki.terakado.c8*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

東北大学大学院工学研究科 応用物理学専攻
教授 藤原 巧(フジワラ タクミ)
電話 022-795-7964 
E-mail takumi.fujiwara.b1*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

< 報道に関して >
東北大学工学研究科 情報広報室
担当 沼澤 みどり
電話 022-795-5898
E-mail eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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