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投手が使用するすべり止め剤の効果を初めて定量的に実証 ~すべりにくい野球ボールの導入やすべり止め剤の開発に期待~

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科ファインメカニクス専攻 教授 山口健
研究者ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 野球の投手が投球時に利用するすべり止め剤のロジン注1粉末は、人による指の摩擦の違いや押付け荷重による摩擦係数注2の違いを小さくできることを解明
  • 使用禁止の粘着物質の利用により50%程度摩擦係数が増加すること、特に投球のボールリリース直前に相当する低い押付け荷重時に摩擦係数が著しく増加することを解明
  • メジャーリーグベースボール(MLB)の公式球は日本野球機構(NPB)の公式球に比べて20%程度摩擦係数が低く、すべりやすいことを実証

【概要】

MLB公式球はすべりやすいとされ、グリップ性やボール回転数を上げるために粘着物質が不正に使用されることが問題となりました。しかし、MLB公式球のすべりやすさや、ロジンや粘着物質などのすべり止め剤利用の影響について、摩擦係数に基づいた定量的な議論はなされておらず、感覚に基づいた議論にとどまっていました。

東北大学大学院工学研究科の山口健教授とNTT コミュニケーション科学基礎研究所の那須大毅主任研究員、カナダのリハビリテーション研究機関KITE Research Instituteの政二慶上席研究員の研究グループは、MLB公式球の皮革部分と指先間の摩擦係数に及ぼすすべり止め剤の効果を初めて明らかにしました。その結果、使用が認められているロジン粉末と使用が禁止されている粘着物質の摩擦係数が定量的に示されました。

さらにMLB公式球とNPB公式球の比較を行い、MLB公式球はNPB公式球に比べて摩擦係数が20%程度低く、よりすべりやすいことが初めて実証されました。これまで感覚的に行われてきたボールのすべりやすさの評価に定量性を与え、すべりにくいボールの導入や新しいすべり止めの開発に指針を与えるものと期待されます。

本研究成果は、世界的な学術出版社シュプリンガーネイチャーの材料科学に関するオンラインジャーナル「Communications Materials」に2022年12月15日に掲載されました。

図 ボール皮革シートと人差し指腹のすべり摩擦試験。(a) 縫い目あり、(b) 縫い目無し、(c) 指に何もつけない場合、(d) ロジン粉末を付けた場合、(e) 粘着物質を付けた場合

【用語解説】

(注1)ロジン
炭酸マグネシウム粉末と松脂(まつやに)の混合粉末。メジャーリーグベースボール(MLB)および日本野球機構(NPB)において投手のすべり止めとして使用が認められている。

(注2)摩擦係数
二面間に作用する摩擦力をその時に作用する垂直方向の力で除した値。一般に、この値が小さいほどすべりやすく、大きいほどすべりにくい。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

<研究に関すること>
東北大学大学院工学研究科 ファインメカニクス専攻 教授 山口健
TEL: 022-795-6897
Email: takeshi.yamaguchi.c8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

<報道に関すること>
東北大学大学院工学研究科 情報広報室 担当 沼澤みどり
TEL: 022-795-5898
E-mail: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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