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加齢や筋ジストロフィー疾患に伴う筋萎縮改善の可能性 筋細胞ミトコンドリアへのカルシウムイオン(Ca2+)の流入阻害が有効

【本学研究者情報】

〇生命科学研究科 教授 東谷篤志
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 加齢に伴う骨格筋量の減少は高齢化社会の大きな問題であり、早期老化が進行する難病の筋ジストロフィーにおいても、筋萎縮の予防・治療薬の開発が切に望まれています。
  • モデル生物を用いた解析により、筋細胞ミトコンドリアへのCa2+流入を阻害することで、加齢に伴う筋機能低下が抑制され、さらには筋ジストロフィーの病態が改善されることを明らかにしました。
  • 加齢や疾患に伴う筋萎縮の予防薬開発の新たなターゲットを提示する成果です。

【概要】

加齢に伴う骨格筋減少は高齢化社会における深刻な問題です。また筋ジストロフィー症は筋肉が徐々に弱っていく難病です。これら筋萎縮の原因として、加齢や疾患に伴うミトコンドリア障害の関与が知られており、またミトコンドリア障害に起因する細胞内Ca2+濃度の上昇が筋崩壊をもたらすことをこれまで報告してきました(引用文献1)。しかしミトコンドリア内Ca2+濃度が筋細胞に及ぼす影響は不明でした。

そこで東北大学大学院生命科学研究科の東谷篤志教授と名古屋大学大学院医学系研究科の小林剛講師は、国際的な共同研究により、モデル生物線虫C. elegansの筋細胞ミトコンドリアのCa2+濃度を可視化する実験系を導入し、加齢や疾患に伴うミトコンドリアCa2+濃度と筋機能の関連を解析しました。その結果、加齢に伴うミトコンドリアCa2+濃度の上昇が、ミトコンドリアの断片化と退縮を引き起こすことを見出しました。またミトコンドリアへのCa2+流入の阻害により、ミトコンドリアの断片化と退縮が抑制され、加齢による筋機能低下と筋ジストロフィー疾患モデル線虫の病態が改善されることを見出しました。本成果は筋萎縮の予防薬開発につながることが期待されます。本研究成果は米国実験生物学会連合誌The FASEB Journalに2023年3月20日付けで掲載されました。

図1. 線虫体壁筋のミトコンドリア形態とミトコンドリアCa2+のイメージング解析
(上)加齢した線虫では、ミトコンドリアが断片化し退縮する。ミトコンドリア内のCa2+濃度は上昇しており、特にミトコンドリア断片化部位に強いシグナルが観察される。(下)ミトコンドリアへのCa2+流入を阻害することで、ミトコンドリアの断片化と退縮が抑制される。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
教授 東谷篤志
TEL:022-217-5715
E-mail: atsushi.higashitani.e7*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)


(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
広報室
高橋 さやか
TEL: 022-217-6193
E-mail: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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