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乳酸が神経細胞分化を促進するメカニズムを解明 神経細胞の「乳酸応答性遺伝子」による情報伝達の区分けに成功

【本学研究者情報】

〇大学院医工学研究科健康維持増進医工学分野 教授 永富良一
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 乳酸がヒトとマウスの神経細胞分化を促進する新規の分子メカニズムを解明しました。
  • 乳酸による 情報伝達経路を区分けする分子としてNDRG3を同定しました。
  • 乳酸は単なる代謝物ではなく神経の機能を制御する分子として働く可能性があることを示唆する成果です。

【概要】

乳酸(lactate)は解糖系とよばれる細胞内エネルギー産生の初期段階で産生される代謝物です。例えば運動による骨格筋の収縮では多くの乳酸が血中に放出されます。これまで乳酸はエネルギー産生における副次的な代謝物として考えられてきましたが、最近では乳酸自体が情報を伝達する物質として様々な細胞機能に影響を与える可能性が指摘されています。東北大学大学院医学系研究科の徐艺丹大学院生、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科の楠山譲二テニュアトラック准教授(研究当時 :東北大学学際科学フロンティア研究所・助教)、東北大学大学院医工学研究科の永富良一教授らのグループは、ヒトとマウスの神経細胞を用いた実験により、乳酸が神経細胞の分化を促進するシグナル伝達機構を解明しました。本研究は、代謝物とみなされてきた乳酸が神経細胞の機能を制御するというユニークな機能を明らかにした重要な報告です。

本研究成果は、2023年6月10日(日本時間6月11日)付でThe Journal of Biological Chemistry誌(電子版)に掲載されました。

図:乳酸による神経細胞分化の促進機構
ヒトやマウスの神経細胞を培養する際、乳酸を加えると神経細胞の分化が促進する(分化指標であるNH-Fが多くなる)ことを見出しました。乳酸は、神経細胞の乳酸輸送体(MCT)によって細胞内に取り込まれると、乳酸に結合するタンパク質であるNDRG3を介して、TEAD1、ELF4といった転写因子を介して神経細胞の分化に関わる遺伝子の発現を促進します。一方で、乳酸はNDRG3を介さない経路によっても神経細胞分化を制御しており、TLE2、EE1A2、HES7などがこの機構に関わっています。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医工学研究科
健康維持増進医工学分野
教授 永富 良一
電話番号:022-717-8588
Eメール:office*sports.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(取材に関すること)
東北大学大学院医工学研究科
電話番号:022-795-5826
Eメール:bme-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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