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光透過率90%以上の結晶化ガラスファイバー創製に成功 - 高速化・大容量化が進む光通信システムへの応用に期待 -

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科 応用物理学専攻
教授 藤原 巧(フジワラ タクミ)
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 光学単結晶(注1)に匹敵する究極の透明多結晶性セラミックス「完全表面結晶化ガラスファイバー」を創製しました。
  • 光の制御と伝送が光ファイバーに一括化された理想的な光通信システムの実現とともに、独自の「放射状の結晶配向構造」を活用した応用展開に期待されます。

【概要】

 日本が目指す未来社会Society 5.0(注2)の実現に向け、光通信の高速化・大容量化が急務です。光通信システムには、一般的に伝送を担う透明で非晶質のガラスのファイバーと制御を担う結晶のデバイスが必要とされています。ところがガラスと結晶という異種(異形態)材料の混在は、光損失や接続不整合性の要因となり、さらなる通信の高速化・大容量化を阻む大きな課題となっています。

 東北大学大学院工学研究科応用物理学専攻大学院生の中村拓真氏(日本学術振興会特別研究員)、藤原巧教授、高橋儀宏准教授らは、同大学大学院工学研究科技術部の宮崎孝道技術専門職員との共同研究により、光ファイバーと同じ材料と形状を持ちファイバー型光制御デバイスへの応用が期待できる新材料「完全表面結晶化ガラスファイバー」を創製しました。さらに、独自の緻密な結晶化制御により、光学単結晶にも匹敵する超低光損失を達成しました。

 本成果は、光の制御と伝送が光ファイバーへと一括化された新たな光通信システムを可能とするのみならず、ユニークな結晶化組織を活かした画期的な応用展開も期待されます。

 本研究成果は、セラミックスに関する国際学術誌Ceramics Internationalに2023年6月28日にオンライン掲載されました。

図1 完全表面結晶化ガラスファイバーの顕微鏡観察結果:(a) 偏光顕微鏡写真。結晶化熱処理温度の低下に伴い、空孔の発生が抑制され(左部)、結晶化組織が均質化した(右部)。 (b) 電子線後方散乱回折法による断面の結晶方位分布。Sr2TiSi2O8結晶のc軸が放射状に並んだ配向構造を持ち、中心部にはガラス相(黒色領域)が存在する。

【用語解説】

注1 光学単結晶
光の制御デバイスや固体レーザー媒質に用いられる単結晶材料。透明性に代表される高い品質を持つ一方で製造コストや加工性の面で課題がある。

注2 Society 5.0
政府が第5期科学技術基本計画で提唱した、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科 応用物理学専攻
教授 藤原 巧(フジワラ タクミ)
TEL: 022-795-7964 
E-mail: takumi.fujiwara.b1*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学大学院工学研究科 応用物理学専攻
博士後期課程 中村 拓真(ナカムラ タクマ)
TEL: 022-795-7965 
E-mail: takuma.nakamura.s5*dc.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学工学研究科 情報広報室
担当 沼澤みどり(ヌマザワ ミドリ)
TEL: 022-795-5898 
E-mail: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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