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超伝導に迫るセンサ感度を有する量子スピンセンサの社会実装が加速 ―大型国家プロジェクトおよび新規ベンチャー企業がスタート―

【本学研究者情報】

大学院工学研究科 応用物理学専攻
教授 大兼幹彦
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 近年、飛躍的な高感度化が進む量子スピンセンサ(注1)を利用した脳磁計(注2)・心磁計(注3)を社会実装する目的で、内閣府・戦略的イノベーション創造プログラム(SIP(注4)において、「量子スピンセンサの開発とユースケースの開拓・実証」プロジェクトがスタートします。
  • SIPプロジェクトで開発する心磁計を、医療機器としていち早く社会実装するため、東北大学発ベンチャー企業「UniMedical株式会社」を設立しました。

【概要】

 心疾患、脳血管疾患は日本における死因の上位にあげられます。東北大学大学院工学研究科応用物理学専攻の大兼幹彦教授らの研究グループが2023年に開発した量子スピンセンサは、室温で動作可能で、かつ脳磁場などの極微弱磁場を検出可能な感度を有しています。このセンサ感度は、超伝導を用いた磁気センサ(SQUID(注5))に迫るものであり、世界最高の性能です。また、高感度化された量子スピンセンサを用いた脳磁計により、室温下で高精度な脳磁場測定が実現されています。これらの研究成果をもとに、SIPプロジェクト第3期として「量子スピンセンサの開発とユースケースの開拓・実証」(研究責任者:大兼 幹彦)が2023年9月に採択され、成果を社会実装するための研究開発が2024年より本格的にスタートします。また、心磁計を医療機器として早期に実用化するための東北大学発ベンチャー企業「UniMedical株式会社」(代表取締役:稲垣 大(循環器専門医))を2023年12月19日に設立しました。プロジェクトの推進と新規ベンチャー企業の立ち上げによって、脳磁場・心磁場などの生体磁場を高感度かつ簡便に測定可能な量子スピンセンサの社会実装が飛躍的に加速することが期待されます。

 

1. 開発された量子スピンセンサの性能(左)と量子スピン脳磁計試作機(右)
量子スピンセンサの性能は、脳磁場の周波数帯において<100フェムトテスラの極微弱磁場を検出可能な性能であり、SQUIDの性能に迫るものである。
量子スピン脳磁計試作機は64チャンネルのセンサを配置し、脳磁場マッピングデータを取得可能である。

【用語解説】

注1. 量子スピンセンサ(通称:TMRセンサ):
極薄の絶縁体を二層の強磁性体で挟んだ構造の素子において、それぞれの磁化の向きで素子抵抗が変化するトンネル磁気抵抗(TMR)効果を用いた磁気センサ。これを用いた脳磁計(注2)・心磁計(注3)は、高空間分解能、高ノイズ耐性、低コスト、ウェアラブル性といった様々なメリットがあり、次世代型の生体磁場計測機器として期待されている。

注2. 脳磁計:
脳の神経細胞を流れる微弱な電流から発生する磁場(脳磁図)を測定する装置。電気で測定する脳波と比べて高空間分解能(mm単位)かつ高時間分解能(ms単位)で脳の活動部位を推定することが可能である。

注3. 心磁計:
心筋の電気的な活動によって生じる磁場(心磁図)を高感度磁気センサで計測する装置。電気で測定する心電図に対して心疾患を高い精度で診断することが可能である。

注4. 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP):
総合科学技術・イノベーション会議が自らの司令塔機能を発揮して、府省の枠や旧来の分野の枠を超えたマネジメントに主導的な役割を果たすことを通じて、科学技術イノベーションを実現するために新たに創設するプログラム。
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/

注5. SQUID:
超伝導量子干渉素子の略、(Superconducting Quantum Interference Device)。超伝導リングにジョセフソン接合を設けた、微小な磁場を測定する磁気センサ。ピコテスラ以下の微弱磁場も検出可能であるが、素子を超伝導状態に冷やす必要があり、液体ヘリウムが必須である。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科応用物理学専攻
教授 大兼 幹彦(おおがね みきひこ)
TEL: 022-795- 7946
Email: mikihiko.ogane.e4*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科情報広報室
担当 沼澤 みどり(ぬまざわ みどり)
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

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