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がん細胞を狙い撃て! がん特異的抗体の取得とその仕組みの解明に成功 ―がん治療の標的分子探索における新たな戦略へ―

【本学研究者情報】

〇大学院医学系研究科分子薬理学分野 教授 加藤幸成
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 正常細胞上のHER2タンパク質には結合せず、がん細胞上のHER2タンパク質だけに結合する抗体の取得に成功
  • がん細胞上のHER2タンパク質では部分的に立体構造が乱れており、それががん細胞のみに結合する抗体の"目印"になることを発見
  • がん細胞のみを攻撃する抗体医薬品の開発への応用に期待

【概要】

大阪大学蛋白質研究所の有森貴夫准教授の研究グループは、東北大学大学院医学系研究科の加藤幸成教授の研究グループと共同で、がん細胞だけに結合して正常細胞には全く反応しない抗体の取得に成功し、さらにその細胞選択性の理由を結晶構造解析などにより明らかにしました。

HER2(human epidermal growth factor receptor 21はがんの治療における標的タンパク質として古くから注目され、HER2に結合する抗体は、HER2陽性乳がん2や胃がんに対する治療薬として利用されています。しかし、HER2は正常細胞上にも存在するため、従来の抗体医薬品では正常細胞まで攻撃してしまうリスクがありました。

今回、有森准教授らは、がん細胞上のHER2だけに結合できる抗体を取得し、その結晶構造解析や細胞を用いた結合解析等により、がん細胞上のHER2は部分的に立体構造が乱れており、それががん細胞を特徴づける"目印"となることを世界で初めて明らかにしました。これらの成果は副作用のない抗体医薬品の開発に繋がることが期待されます。

本研究成果は、米国科学誌「Structure」に、39日(土)午前1時(日本時間)に公開されました。

図1 乳がん細胞と正常な乳房上皮細胞に対するH2Mab-214の結合性の評価(フローサイトメトリー)

【用語解説】

※1 HER2 (human epidermal growth factor receptor 2)
ヒト上皮細胞増殖因子受容体2。細胞の増殖に関与するとされるタンパク質のひとつ。正常な細胞にも存在し、細胞の増殖調節能を担っていると考えられるが、過剰に発現したり、活性化したりすることで細胞の増殖制御ができなくなりがん化する。HER2陽性率が高い腫瘍としては、乳がんや胃がんなどがある。

※2 HER2陽性乳がん
約20%の乳がん患者ではがん細胞上にHER2がたくさん作られており、このようなタイプの乳がんをHER2陽性乳がんという。HER2陽性乳がんは増殖が速く、悪性度が高いことが知られている。HER2陽性乳がんにおいては、HER2に結合する抗体医薬品であるトラスツズマブ(ハーセプチン®)の出現により、治療成績が大きく改善された。さらにその後も、他の抗HER2抗体であるペルツズマブ(パージェタ®)や、トラスツズマブを応用した医薬品などが開発されている。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科 教授 加藤 幸成
(かとう ゆきなり)
TEL: 022-717-8207
Email: yukinari.kato.e6*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
TEL: 022-717-8032
E-mail: press*pr.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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