2024年 | プレスリリース・研究成果
人工知能(AI)によって膵臓がん患者腹水中の生存関連因子を見つける ―腹腔内の免疫細胞が膵臓がん患者の生存期間に影響―
【本学研究者情報】
〇大学院医学系研究科病態病理学分野 教授 古川 徹
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 人工知能(AI)によって、腹腔内の免疫細胞を、膵臓(すいぞう)がん患者の生存期間を予測するための新しい因子として同定しました。
- AIで分類された細胞の比率から、膵臓がん患者の長期生存の確率を精度高く予測することに成功しました。
- これらの新しい生存関連因子は、患者間の微小な差異を鋭敏に検出できると共に、膵臓がんの新しい治療標的となる可能性があります。
- AI for science(AI を活用した科学研究の革新)の成果の一つであり、今後、他のがん治療やさまざまな疾患への応用も期待されます。
【概要】
膵臓がんは非常に難治で生存率の低いがんであり、生存率改善のために、現状よりも鋭敏な生存関連因子の探索が世界中で行われています。
東北大学大学院医学系研究科消化器外科学分野 野口彩、海野倫明教授、病態病理学分野 古川徹教授、理化学研究所革新知能統合研究センター病理情報学チーム 山本陽一朗チームリーダー(兼 東北大学大学院医学系研究科数理知能医学講座)らの共同研究グループは、膵臓がん患者の腹腔内の免疫細胞(好中球(注1)およびマクロファージ(注2))の比率が生存率に影響することを、人工知能(AI)を用いて明らかにしました。
今後、これらの新しい生存関連因子に基づき、膵臓がん患者の個別化医療の実現と新しい治療戦略の開発が期待されます。また、現在注目されているAI for science(AI を活用した科学研究の革新)の成果の一つとして、他のがん治療やさまざまな疾患への応用にも波及効果をもたらすことが考えられます。
図1. 人工知能が着目した膵臓がん患者の腹腔内の免疫細胞 通常の腹水細胞診ではがん細胞の有無を判定するが、本研究ではあえて陽性の細胞診標本同士を比較することで、これまで明らかになっていなかった腹水中のがん細胞以外の細胞環境について高精度な解析が可能となり微小な差異を検出することに成功。
【用語解説】
注1. 好中球:白血球の一種。細菌や真菌などの病原体と戦い、感染症から体を守る主要な役割を担っている。
注2. マクロファージ:白血球の一種。体内に侵入した細菌やウイルスなどの病原体や不要な細胞を取り込んで分解したり、免疫反応を惹起したりする能力を有する。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科病態病理学分野
教授 古川 徹 (ふるかわ とおる)
TEL: 022-717-8149
Email: toru.furukawa.e2*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
東北大学病院広報室
TEL: 022-717-8032
Email: press*pr.med.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
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