2024年 | プレスリリース・研究成果
ChatGPT等で有効な深層学習は脳波の解析でも有用である ―Transformerモデルは脳波パターンを高精度に推定する―
【本学研究者情報】
〇大学院薬学研究科 薬理学分野
教授 佐々木拓哉
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 最近のChatGPTなどの生成AI技術では、自然言語処理に特化したTransformerモデルが活躍しています。Transformerモデルが脳波の解析でも高い推定精度を発揮することを示しました。
- 内臓痛を引き起こしたマウスにおいて、8つの脳領域から記録した脳波データを用いました。
- 脳波パターンから様々な心身状態を解読するための新たな可能性を開き、将来の脳-機械インターフェースの開発に貢献することが期待されます。
【概要】
脳波は、脳の様々な活動の結果として発生する電気信号の集合であり、絶え間なく連続して発生する時系列信号です。脳波における特定の周波数の信号(アルファ波やガンマ波)が、覚醒状態や注意を反映していることが知られています。今よりもさらに高度な情報を脳波から読み取るためには、近年発展が著しいAI技術の活用に期待がもてます。特に、最近のChatGPTなどの生成AI技術で活躍している、時系列情報である自然言語処理に有用なVision Transformer(注1)をベースにした深層学習モデルが有望かもしれません。
東北大学大学院薬学研究科の佐々木拓哉教授・田村篤史特任助教・鹿山将研究員、生命科学研究科の筒井健一郎教授、生理学研究所の北城圭一教授らの研究グループは、マウスに嫌悪的な内臓痛を引き起こし、8つの脳領域から記録した脳波(局所場電位)パターンをVision Transformerにより解析しました。その結果、従来の画像解析で用いられるような深層学習と比較して、より高精度に内臓痛の状態を検出できることを示しました。
本研究成果は、複雑な脳活動パターンの解読に新たな可能性を開くものであり、情動の客観的評価をはじめとして、高度な脳-機械インターフェースの開発につながることが期待されます。
この研究成果は、2024年10月17日(木曜日)に科学誌Scientific Reports誌に掲載されました。
図1. マウスに内臓痛を誘発し、8つの脳領域の脳波(局所場電位)を計測した。 図2. 脳波信号を5秒おきに区切って、内臓痛に由来する嫌悪状態を生じる前後の脳波が、正常と嫌悪状態のどちらに判別されるか検討した。 図3. 脳波を推定するための解析法として、従来の周波数パワーに基づいた解析、AlexNet、Transformerの3つを比較した。周波数パワー解析よりもAlexNet、さらにAlexNet よりもTransformerは有意に高い判別精度を示した。*P < 0.05。
【用語解説】
注1. Transformer:自然言語処理タスクで高い性能を示す人工知能モデルの一種。
【論文情報】
Title: Transformer-based classification of visceral pain-related local field potential patterns in the brain
Authors: Tasuku Kayama*, Atsushi Tamura, Tuo Xiaoying, Ken-Ichiro Tsutsui, Keiichi Kitajo, Takuya Sasaki**.
*筆頭著者
**責任著者:東北大学大学院薬学研究科 教授 佐々木拓哉
Journal: Scientific Reports
DOI: 10.1038/s41598-024-75616-6
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院薬学研究科
教授 佐々木拓哉
TEL:022-795-5503
Email:takuya.sasaki.b4*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
東北大学大学院生命科学研究科
教授 筒井健一郎
TEL:022-217-5047
Email:tsutsui*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院薬学研究科
総務係
TEL:022-795-6801
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(*を@に置き換えてください)