本文へ
ここから本文です

芳香族環上のフッ素原子を炭素・ヘテロ元素置換基に効率的に交換する触媒反応を開発 医薬品の新しい合成手法として期待

【本学研究者情報】

〇大学院薬学研究科 分子変換化学分野
准教授 重野真徳
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 芳香族化合物(注1のフッ素原子を様々な置換基2に変換する芳香族求核置換反応3において、効率的な触媒反応の開発に成功しました。
  • 本反応は従来捉えられてきた段階的な反応機構とは異なり、一段階の協奏的4な反応形式で進行することを見いだしました。
  • 本成果によって、医薬品候補化合物や機能性材料の新規合成戦略を提供するとともに、それらのライブラリー構築にもつながると期待されます。

【概要】

芳香族求核置換(SNAr)反応は最も歴史ある有機化学反応の1つで、1870年代から研究が行われてきました。この反応機構は "求核剤5の付加"と"ハロゲノ基6の脱離"という2つの段階的な過程で構成されることが長らく有機化学の常識とされてきました。一方で近年、付加と脱離が一段階で進行する協奏的な芳香族求核置換(CSNAr)反応が理論化学および実験化学で示されました。この形式の反応は、従来のSNAr反応での限られた基質適応範囲を大きく拡大すると期待されますが、これまで散発的に見つかっている程度であり、多様な出発物質に対して有効な反応系は見出されていませんでした。

東北大学大学院薬学研究科の重野真徳准教授、林和寿大学院生(研究当時)、笹本大空助教、及び根東義則教授(現名誉教授)らの研究グループは、岩手大学理工学部化学・生命理工学科の是永敏伸教授と共同で、多様なフルオロアレーン7の置換反応が行える触媒的なCSNAr反応を開発しました。本成果は、新規有機合成戦略の開拓や生物活性物質のライブラリー構築にもつながると期待されます。

本成果は2024年11月8日付で、アメリカ化学会発行の学術誌Journal of the American Chemical Societyに掲載されます。

図1. 芳香族求核置換(SNAr)の反応形式。CSNArは古典的なSNArと異なり、電子求引基だけでなく多様な置換基を有する芳香族フッ化化合物と反応できることが知られていた。一方で、反応例が散発的に見つかっているだけで、限定的だった。

【用語解説】

注1. 芳香族化合物
芳香族性を有する有機化合物の総称。主にベンゼン環を有する化合物を指す。自然界にも多く存在するとともに、生物活性物質、液晶化合物、電子材料など多岐の機能性物質として活用されている。

注2. 置換基
母体となる炭化水素骨格の特定の位置において、水素原子と置き換わった原子または原子団を指す。ベンゼン環上の水素原子が置換基に置き換わることで化合物の物理的・化学的性質が変化することが知られている。

注3. 芳香族求核置換反応
置換反応の一種。芳香環に直接結合した置換基が別の置換基と置き換わる反応で、特に脱離可能な置換基を有する電子不足な芳香族化合物で起こりやすい。

注4. 協奏的
有機反応において、化学結合の形成/開裂が同時に起こることを意味する。

注5. 求核剤
一般に電子豊富な化学種で、電子密度の低い原子や置換基に対して反応性を示す。

注6. ハロゲノ基
周期表第17族元素(F, Cl, Br, I, At)の置換基名の総称。

注7. フルオロアレーン
芳香環にフッ素原子(F)が置換した化合物の総称。

【論文情報】

タイトル:Catalytic concerted SNAr reactions of fluoroarenes by an organic superbase
著者:Masanori Shigeno*, Kazutoshi Hayashi, Ozora Sasamoto, Riku Hirasawa, Toshinobu Korenaga*, Shintaro Ishida, Kanako Nozawa-Kumada, and Yoshinori Kondo
*責任著者:東北大学大学院薬学研究科 准教授 重野真徳、岩手大学理工学部化学・生命理工学科 教授 是永敏伸
掲載誌:Journal of the American Chemical Society
DOI:10.1021/jacs.4c09042

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院 薬学研究科 准教授 重野真徳
TEL: 022-795-5917
Email: masanori.shigeno.e5*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院薬学研究科 総務係
TEL: 022-795-6801
Email: ph-som*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

sdgs_logo

sdgs09

東北大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています

このページの先頭へ