本文へ
ここから本文です

磁気構造のねじれによる整流効果の機構を解明 磁気情報読み出し技術の開発への貢献に期待

【本学研究者情報】

〇金属材料研究所 特任研究員(日本学術振興会特別研究員PD) メイヨー アレックス浩
金属材料研究所 教授 小野瀬佳文
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 磁気モーメント(注1がらせん状に整列するらせん磁性体(注2とよばれる磁性体では、らせんのねじれ方向(右回り・左回り)に応じて電流の流れやすさが異なる整流効果(注3を示すことが知られています。
  • 伝導電子が磁気構造のらせんに沿って進むとき、その進行方向によって速さが異なることが整流効果の起源であることが明らかになりました。
  • 整流効果を測定することで、らせんのねじれ方向を特定できるため、今回明らかになったメカニズムはらせん磁気情報の読み出しの効率化に利用できます。

【概要】

磁気モーメントがらせん状に整列したらせん磁性体には、右巻き・左巻きの自由度(キラリティ)が存在し、各キラリティを "0" "1" に対応させた新しい情報担体への応用が期待されています。その情報を読み出す手段として、キラリティに応じて電流の流れやすさが異なる整流効果(非相反電気伝導現象(注3)が有効と期待されるものの、微視的な発現機構が未解明であり、読み出し効率の高度化を妨げていました。

東北大学金属材料研究所のメイヨー アレックス浩 特任研究員(日本学術振興会特別研究員PD)と小野瀬佳文 教授、大阪大学大学院基礎工学研究科の石渡晋太郎 教授、英国マンチェスター大学のMohammad Saeed Bahramy 講師らの共同研究グループは、らせん磁性半金属α型リン化ユウロピウム(α-EuP3)を対象に電気伝導実験と第一原理電子状態計算を行い、磁場印加により、らせんに沿った電子の速さが方向によって異なることが整流効果の起源であることを明らかにしました。本成果は、効率的なキラリティ検出を実現するための材料設計指針を示し、既存の強磁性体に代わり、らせん磁性体を用いた「キラリティ磁気メモリ」の実用化を前進させるものといえます。

本研究成果は 2025 年 1 23 日(米国時間)に米国科学アカデミー紀要 (PNAS:Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America) に掲載されました。

図1. 整流効果の磁場依存性。円錐状磁気構造のときのみ整流が観測されます。

【用語解説】

注1. 磁気モーメント
磁性の強さとその向きを表すベクトル量。原子が持つ微小な磁石(原子磁石)としての性質を表し、その配列の仕方によって物質全体の磁気特性が決まる。

注2. らせん磁性体
磁気モーメントがらせん状に回転する磁気配列を持つ物質。一つの原子層内では磁気モーメントが同じ方向に揃っているが、隣接する原子層ごとに少しずつ向きが変わり、物質全体としてらせん状の構造を形成する。

注3. 整流効果(非相反電気伝導現象)
物質中において電流が一方向に流れやすくなる現象。特定の対称性が破れることで、電流の流れが方向によって異なる状態を示す。

【論文情報】

タイトル:Band asymmetry-driven nonreciprocal electronic transport in a helimagnetic semimetal α-EuP3
著者: Alex Hiro Mayo*, Darius-Alexandru Deaconu, Hidetoshi Masuda, Yoichi Nii, Hidefumi Takahashi, Rodion Vladimirovich Belosludov, Shintaro Ishiwata, Mohammad Saeed Bahramy, Yoshinori Onose
*責任著者:東北大学金属材料研究所 特任研究員(日本学術振興会特別研究員PD) メイヨー アレックス浩
掲載誌:Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America (PNAS)
DOI:10.1073/pnas.2405839122

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学金属材料研究所
学振研究員 メイヨー アレックス浩
TEL: 022-215-2244
Email: alex.hiro.mayo.d1*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学金属材料研究所 情報企画室広報班
TEL: 022-215-2144 FAX: 022-215-2482
Email: press.imr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

sdgs_logo

sdgs07 sdgs09

東北大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています

このページの先頭へ