2025年 | プレスリリース・研究成果
燃料不要ロケットの打ち上げ実証に成功 ─ レーザーで推進エネルギーを継続的に供給 ─
【本学研究者情報】
〇大学院工学研究科 航空宇宙工学専攻
准教授 高橋 聖幸
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 繰り返しパルスレーザー(注1)をロケットに鉛直方向に照射し、燃料を使わずに飛行するレーザー推進ロケットの打ち上げ実証に成功しました。
- 「複数放物面レーザー推進機」の開発により、飛行中の機体の動きを受動的に制御することに成功しました。
- ロケットの動きをリアルタイムで追尾しながらレーザー照射位置を調整し、推進エネルギーを継続的に供給する「レーザートラッキングシステム」の開発・実証に成功しました。
【概要】
地上からロケットにレーザーを照射して推進力を与える「レーザー推進」は、燃料を搭載せずに打ち上げ可能な新しい方式として注目されています。しかし、機体をレーザーの軸上に乗せ続けることが難しく、安定した飛行を実現するには課題がありました。
東北大学大学院工学研究科の高橋聖幸准教授、速館佑弥大学院生(研究当時)、大阪公立大学大学院工学研究科の森浩一教授、東北大学流体科学研究所の早川晃弘准教授らは、独自に開発した「複数放物面レーザー推進機」の打ち上げ実験を行い、繰り返しパルスレーザーの照射により、機体全長約15 mmの約7倍の高度110 mmまで自由飛行させることに成功しました。さらに、安定飛行の実現のため、ロケットの動きをリアルタイムで検知してレーザー照射位置を追従させる「レーザートラッキングシステム」を開発し、継続的な推力付与を実現できることを世界で初めて示しました。これらの成果は、レーザー推進システムによるロケット打ち上げの実現に向けた大きな一歩です。
本研究成果は、2025年5月3日付けの科学誌Scientific Reportsに掲載されました。

図1. 開発した複数放物面レーザー推進機。機体全長は約15 mm。
【用語解説】
注1. 繰り返しパルスレーザー
非常に短い時間だけ発光する高出力レーザー光を、毎秒数十回以上の頻度で繰り返し照射するもの。1回あたりのレーザーエネルギーを集中させて高温・高圧の状態を得るのに適している。
【論文情報】
タイトル:Free-flight and tracking experiments of a multi-parabola laser propulsion vehicle
著者:Masayuki Takahashi*, Yuya Hayadate, Koichi Mori, and Akihiro Hayakawa
*責任著者:東北大学大学院工学研究科 航空宇宙工学専攻 准教授 高橋 聖幸
掲載誌:Scientific Reports, Vol. 15, 15513 (2025).
DOI:10.1038/s41598-025-00429-0
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科
准教授 高橋 聖幸
TEL: 022-795-3864
Email: masayuki.takahashi.c8*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科情報広報室
担当 沼澤 みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
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