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温度が変化しても安定した信号を計測できる高分子薄膜を開発

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科 応用化学専攻
客員准教授 山本 俊介
研究者ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 有機電気化学トランジスタ(OECT)(注1の高機能化に向けて、温度応答性高分子を導入したポリマーブレンド膜を開発しました。
  • 異なる性質を持つ2種類の高分子材料と架橋剤を適切に組み合わせることで、しなやかさ・導電性・計測能力を同時に満たすことができました。
  • 本成果は装着型・埋め込み型バイオセンサへの応用展開につながることが期待されます。

【概要】

日々の健康状態をより正確に把握する次世代バイオセンサとして、生体親和性に優れ、水中でも安定して動作する有機電気化学トランジスタ(OECT)が近年注目を集めています。

東北大学大学院工学研究科の金田一修平大学院生(研究当時)、山本俊介客員准教授(京都大学大学院工学研究科 准教授)、三ツ石方也教授らは、静岡大学工学部、米国ワシントン大学化学科と共同で、OECTの高機能化に取り組み、温度が変化しても安定して動作する素子の作製に成功しました。これは、従来用いられてきた導電性高分子(注2に温度応答性高分子を混合し、さらに適切な架橋剤を用いることで、活性層の安定性を高めたことによる成果です。本研究は、温度以外の物理量や化学物質濃度の検出にも対応可能な高性能・高機能OECT素子の開発に向けた重要な設計指針となるものです。

本研究は、東北大学と米国ワシントン大学が推進する連携事業「University of Washington-Tohoku University: Academic Open SpaceUW-TU:AOS)」を活用して実施されました。

本成果は2025年5月10日(ドイツ時間)に科学誌Smallでオンライン公開されました。

開発した薄膜
(約2.5 cm角のガラス基板上に成膜し、水に浸漬。)

【用語解説】

注1. 有機電気化学トランジスタ(OECT):電子とイオンの両方を輸送できる「混合伝導体」を活性層(チャネル)に用い、この層へイオンの注入・抽出によって電気伝導率を変化させる電子素子です。神経模倣素子としての応用に加え、生体計測用センサとしても盛んに研究が進められています。

注2. 導電性高分子:電気を流す性質を持つ高分子材料です。「プラスチック」として用いられる一般的な高分子(PET、ポリスチレン、ポリエチレンなど)は電気を流さない絶縁体ですが、導電性高分子は半導体や導体として機能します。

【論文情報】

タイトル:Organic Electrochemical Transistors Based on Blend Films with Thermoresponsive Polymer
著者:Shunsuke Yamamoto*, Shuhei Kindaichi, Ryosuke Matsubara, Atsushi Kubono, Rajiv Giridharagopal, David S. Ginger, Masaya Mitsuishi
*責任著者:東北大学大学院工学研究科応用化学専攻/京都大学大学院工学研究科高分子化学専攻 山本 俊介
掲載誌:Small
DOI:10.1002/smll.202501927

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
京都大学大学院工学研究科高分子化学専攻 准教授
(東北大学大学院工学研究科応用化学専攻 客員准教授)
山本 俊介
TEL: 075-383-2613
Email: syama*photo.polym.kyoto-u.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科情報広報室
担当 沼澤みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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