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母乳のオリゴ糖が子豚の健全な腸内細菌叢の形成に貢献 子豚の健全育成に向けた機能性代用乳設計への応用に期待

【本学研究者情報】

〇大学院農学研究科 准教授 西山啓太
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〇大学院農学研究科 教授 北澤春樹
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【発表のポイント】

  • 豚の母乳に豊富に含まれるシアル酸修飾オリゴ糖(シアリルラクトース)が、乳酸菌の優先的な腸内定着に寄与することを発見しました。
  • シアリルラクトース由来のシアル酸を乳酸菌の一種 L. salivariusが利用することで、乳酸から酢酸の産生へと代謝がシフトし、病原性大腸菌の増殖を抑制することが示されました。
  • 粉ミルク(代用乳)で育てられた子豚では、 L. salivariusの定着率が低く、腸内細菌叢の多様性が乏しくなり、下痢様の便が観察されました。
  • 代用乳へのシアロオリゴ糖の添加は、子豚の腸内細菌叢の改善を介した新たな育成技術として、養豚現場への実装が期待されます。

【概要】

子豚の腸内細菌叢の形成は、その後の成長や免疫発達、感染抵抗性に深く関与します。東北大学大学院農学研究科の橋本凌河大学院生(研究当時)、西山啓太准教授、北澤春樹教授らは、豚の母乳に豊富に含まれるオリゴ糖(シアリルラクトース)が、健康な子豚で観察される乳酸菌優勢な腸内細菌叢の形成を担う鍵因子であることを見出しました。

子豚の腸内細菌叢の継時的な変化を解析すると、哺育期には乳酸菌 Ligilactobacillus salivarius が優勢であることが分かりました。L. salivarius は母乳中のシアル酸を代謝し、その過程で作られた酢酸は、病原性大腸菌の増殖を抑制しました。一方、シアル酸をほとんど含まない代用乳で育てた子豚では、腸内細菌の多様性が乏しく下痢症状の傾向が見られました。本結果は、母乳中のシアリルラクトースが子豚の腸内環境の形成に重要であることを示すと共に、代用乳の改良による家畜の健全育成への応用が期待されます。

本研究成果は、2025年5月24日に科学誌Microbiomeに掲載されました。

図1. 母乳のシアロオリゴ糖が子豚の腸内細菌叢形成に及ぼす影響

【論文情報】

タイトル:Milk sialyl-oligosaccharides mediate the early colonization of gut commensal microbes in piglets
著者: Ryoga Hashimoto, Keita Nishiyama*, Fu Namai, Kasumi Suzuki, Taiga Sakuma, Itsuko Fukuda, Yuta Sugiyama, Kenji Okano, Takafumi Shanoh, Eita Toyoshi, Ryusuke Ohgi, Sudeb Saha, Sae Tsuchida, Eri Nishiyama, Takao Mukai, Mutsumi Furukawa, Tomonori Nochi, Julio Villena, Wakako Ikeda‑Ohtsubo, Gou Yoshioka, Eri Nakazaki, Yoshihito Suda, Haruki Kitazawa*
*責任著者:東北大学大学院農学研究科 准教授 西山啓太
      東北大学大学院農学研究科 教授 北澤春樹
掲載誌:Microbiome
DOI:10.1186/s40168-025-02129-3

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院農学研究科
准教授 西山啓太
TEL: 022-757-4373
Email: keita.nishiyama.a6*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学農学研究科
総務係
TEL: 022-757-4003
Email: agr-syom*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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