2025年 | プレスリリース・研究成果
海域で発生するスロー地震を見逃さない! 機械学習を用いて日本海溝のテクトニック微動をモニタリングする手法を開発
【本学研究者情報】
〇大学院理学研究科地球物理学専攻
助教 加納 将行(かのう まさゆき)
東北大学研究者情報
【発表のポイント】
- 日本海溝で発生するスロー地震の一種であるテクトニック微動を機械学習によって高感度に検出する解析フローを開発
- 8年間分の地震波形データを解析し、従来法と比べ7倍の数のテクトニック微動を検出
- プレート境界においてひずみが蓄積されている場所、解放されている場所の評価に貢献
【概要】
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)活断層・火山研究部門 寒河江 皓大 特別研究員らは、国立大学法人 東北大学 大学院理学研究科 加納 将行 助教と共同で、機械学習を用いてテクトニック微動を高感度に検出する解析フローを開発し、日本海溝に設置された地震観測網で得られたデータに適用しました。
プレート境界などに蓄積された地殻のひずみが、断層すべりによって瞬間的に解放される現象を地震といいます。通常の地震に対して、断層がゆっくりとすべる現象をスロー地震と呼びます。スロー地震は、発生する地震波の周期などに応じていくつかの分類があり、テクトニック微動はその一つです。大地震の前にスロー地震が先行して発生した事例などが報告されていることから、プレート境界においてスロー地震の発生場所や発生時期を詳細に調べることは、ひずみが蓄積されている場所や解放されている場所の把握につながる可能性があります。
本研究では、機械学習を用いた手法で、地震観測網で得られた波形データからテクトニック微動を検出し、その震源位置を決定する新しい解析フローを確立しました。また、それを東北沖の日本海溝に設置された地震観測網の8年間分のデータに適用し、従来法と比較して7倍の数のテクトニック微動を検出することができました。今回新たにテクトニック微動が検出された場所もあり、通常の地震とテクトニック微動の空間的、時間的な関係がより明瞭になりました。今後、テクトニック微動活動の時間変化をより細かく調査することで、スロー地震の発生メカニズムを解明する手がかりになる可能性があります。
なお、この研究の詳細は、2025年5月31日に「Journal of Geophysical Research: Solid Earth」に掲載されました。
機械学習によるテクトニック微動の検出数の増加。点はテクトニック微動の震央位置を示し、その色はテクトニック微動のエネルギー(対数表記)を示す。赤色の等値線は東北地方太平洋沖地震のすべり域を示す。灰色の破線は日本海溝の位置を示す。白の三角形は観測点の位置を示す。
※原論文の図を引用・改変したものを使用しています。
【用語解説】
テクトニック微動
人間には揺れを感じることができず、地震計でも観測限界を少し上回る程度の地震波が数十秒から数日継続する現象。プレート境界や巨大地震発生域の周辺で観測されており、後述のスロー地震の一種である。
スロー地震
通常の地震よりもゆっくりと断層がすべる現象。測地学的観測の時間スケール(数日から数年)から地震学的観測の時間スケール(数秒から数百秒)まで幅広い帯域で観測されている。
【論文情報】
タイトル:Machine Learning-Based Detection and Localization of Tectonic Tremors in the Japan Trench
著者: Kodai Sagae, Masayuki Kano, Suguru Yabe, Takahiko Uchide
掲載誌:Journal of Geophysical Research: Solid Earth
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院理学研究科 地球物理学専攻
助教 加納 将行(かのうまさゆき)
TEL:022-795-6783
Email:masayuki.kano.a3*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院理学研究科
広報・アウトリーチ支援室
TEL:022-795-6708
Email:sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)