2025年 | プレスリリース・研究成果
東北大学・JR東海 航空機空力シミュレーション技術で挑む次世代新幹線(超電導リニア)の空力性能向上 スーパーコンピュータ「富岳」を活用した実車両走行シミュレーション
【本学研究者情報】
〇大学院工学研究科 航空宇宙工学専攻
教授 河合宗司
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 東北大学大学院工学研究科と東海旅客鉄道株式会社は共同研究により、スーパーコンピュータ「富岳」(注1)を活用した超電導リニア車両の空力性能向上に資する技術開発を実施します。
- スーパーコンピュータ「富岳」成果創出加速プログラム(注2)において、東北大学が開発した次世代の航空機空力シミュレーション技術を超電導リニアに展開します。
- 実車両走行における流れ(乱流)や空力音を次世代の大規模シミュレーションで高精度に再現し、低走行抵抗、静音性、乗り心地に優れた超電導リニアの開発を目指します。
【概要】
東北大学大学院工学研究科の河合宗司教授の研究チームは、スーパーコンピュータ「富岳」成果創出加速プログラム「航空機デジタルフライトが拓く機体開発DXに向けた実証研究」において、次世代の流体解析ソルバーFFVHC-ACE(注3)の開発を進めています。このソルバーは、独自の研究成果を基盤とし、これまで難しかった複雑な形状周りの高速・高レイノルズ数流れ(注4)を高精度に解析する能力を持ち、「富岳」上で活用することで、世界で初めて、実際の航空機フライト試験を大規模シミュレーションで再現することにも成功しています[1]。
東北大学は、この技術を活用し、東海旅客鉄道株式会社との共同研究を開始します。航空機と超電導リニアに共通する要素である、高速・高レイノルズ数流れに着目し、次世代の航空機空力シミュレーション技術を超電導リニアに先導的に展開します。これにより、複雑な形状を含む車両編成全体の解析が可能となり、空力特性をより精緻に把握することで、走行抵抗の低減や環境適合性能の向上などにつなげていきます。

図1. 次世代の航空機空力シミュレーション技術で挑む超電導リニアの空力性能向上
【用語解説】
注1. スーパーコンピュータ「富岳」:スーパーコンピュータ「京」の後継機として理化学研究所が設置し、2021年3月から共用を開始した計算機。2020年6月以降、世界のスーパーコンピュータに関するランキングにおいて、4部門で4期連続1位、うち2部門で10期連続1位を獲得するなど、世界トップレベルの性能を持つ。
注2. スーパーコンピュータ「富岳」成果創出加速プログラム:科学的・社会的課題解決に直結する成果の早期創出を支援するために、2020年度から文部科学省が実施している事業。
注3. FFVHC-ACE:「富岳」成果創出加速プログラム「航空機デジタルフライトが拓く機体開発DXに向けた実証研究」(代表機関:東北大学)において開発を進める完全自動・高精度な圧縮性流体解析ソルバー。流体解析ソルバーとは、流体(液体や気体)の動きや振る舞いを計算するためのコンピュータープログラム。流体の流れをシミュレーションして、さまざまな現象を予測したり、最適な設計を導き出したりするために使われる。
関連論文:https://doi.org/10.2514/1.J062593
注4. レイノルズ数:流体の運動を記述する基礎方程式に現れる慣性力と粘性力の比で定義される無次元量。レイノルズ数が大きい高レイノルズ数流れでは、粘性力に比べ慣性力が支配的となり、流れは乱れた乱流となる。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科
教授 河合 宗司
Email: kawai*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
東北大学大学院工学研究科
情報広報室
担当 沼澤 みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
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