2025年 | プレスリリース・研究成果
双方向噴射型プラズマ推進機の性能を向上 ~非接触での宇宙ごみ除去法の実現に期待~
【本学研究者情報】
〇大学院工学研究科 電気エネルギーシステム専攻
准教授 高橋和貴
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 非接触で宇宙ごみを除去するための衛星に搭載することを想定した推進機の性能を室内実験で向上させることに成功しました。
- キセノン(Xe)など従来の推進剤に比べて入手容易なアルゴン(Ar)を用い、大電力で安定した作動を実現しました。
- 宇宙ごみに触れずに軌道を変える非接触除去技術の実現に向けて大きく前進しました。
【概要】
宇宙ごみ(スペースデブリ)は、役目を終えた人工衛星やロケットの破片で、地球の周りを高速で飛び回っており、増え続けることで運用中の衛星や宇宙機に衝突する危険が高まっています。そのため、「除去衛星」を軌道に投入し、安全にスペースデブリを取り除く手法の研究が進められています。
東北大学大学院工学研究科の高橋和貴准教授が開発を進める「双方向プラズマ噴射型の無電極プラズマ推進機」は、デブリに向けてプラズマを噴射することで対象物に減速力を与えつつ、逆噴射を同時に行うことによって自身には余分な推力がかからない仕組みを持っています。今回の研究では、この推進機の大電力化に加えて、「カスプ磁場(注1)」と呼ばれる特殊な磁場配位を導入し、これまで8mN程度であった減速力を25mN程度にまで向上させることに室内実験で成功しました。この成果は、スペースデブリを効率的かつ安全に除去する推進システムとして、技術的に大きな一歩となります。
研究グループは今後、さらなる性能向上と、実際に除去衛星に搭載可能な構造の推進機の研究開発を進めていきます。
本研究成果は2025年8月20日(現地時間)にオープンアクセス科学雑誌Scientific Reportsに掲載されました。

図1. 双方向噴射型のプラズマ推進機を用いた宇宙ゴミ除去法の概念図
【用語解説】
注1. カスプ磁場:磁力線の形状が尖ったように見える磁場構造であり、二つのソレノイドコイルに流す電流の向きを逆にすることで形成可能である。この方法では径方向中心領域では磁場強度がゼロになる特徴を有しており、壁面へのプラズマ損失を抑制する効果がある。
【論文情報】
タイトル:Cusp-type bi-directional radiofrequency plasma thruster toward contactless active space debris removal
著者: Kazunori Takahashi*
*責任著者:東北大学大学院工学研究科 准教授 高橋和貴
掲載誌:Scientific Reports, 15, 30589 (2025)
DOI:10.1038/s41598-025-16449-9
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科 電気エネルギーシステム専攻
准教授 高橋 和貴(たかはし かずのり)
TEL: 022-795-7064
Email: kazunori.takahashi.e8*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科 情報広報室 担当 沼澤 みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
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