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リンパ行性薬物送達法(LDDS)の溶媒設計を最適化 ― 浸透圧と粘度の制御によりがん転移リンパ節への効率的な薬物動態を実現 ―

【本学研究者情報】

〇大学院医工学研究科 教授 小玉 哲也
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 世界で唯一のヒトと同程度の大きさのリンパ節を有するモデルマウスを用い、リンパ節内に直接投与された溶媒の浸透圧(注1)と粘度(注2)が、投与中および投与後のリンパ系・血管系の流れに及ぼす影響を解明しました。
  • 治療目的に応じた「溶媒の最適設計指針」を確立し、現在進行中の特定臨床研究(第Ⅰ相試験)(3)を含むリンパ行性送達技術の臨床応用を加速させることが期待されます。

【概要】

がんのリンパ節転移は患者の予後を左右する重要な病態であり、早期かつ局所的な治療法が求められます。抗がん剤をセンチネルリンパ節(4)に直接投与し、下流のリンパ節へと送達する「リンパ行性薬物送達法(lymphatic drug delivery system:LDDS)」は、革新的な治療法として注目されています。

しかし使用する溶媒の浸透圧や粘度といった物理化学的特性が、リンパ節内の薬物分布や周囲の微小循環動態にどのような影響を及ぼすのか、その詳細なメカニズムはこれまで十分に明らかにされていませんでした。

東北大学大学院医工学研究科の小玉哲也教授、島野大輝(大学院生)、同大学院歯学研究科のAriunbuyan Sukhbaatar助教らの研究グループは、LDDS投与後のリンパ節内における薬剤挙動と微細循環動態を包括的に解析しました。その結果、高浸透圧溶媒が投与リンパ節への血液流入を誘導してリンパ洞を拡張させる効果を有すること、ならびに溶媒の粘度が薬剤のリンパ節内貯留性を決定づける主要因であることを明らかにしました。

本研究成果は、症例や治療目的に応じたオーダーメイド型溶媒設計(5)に対する明確な指針を掲示するものです。

本成果は、2026年1月13日付で国際学術雑誌Biomedicine & Pharmacotherapy(電子版)に掲載されました。

図1. リンパ行性薬剤送達法(LDDS)の概念図と治療戦略に応じた溶媒の浸透圧・粘度の最適範囲。リンパ行性薬剤送達法によりセンチネルリンパ節に直接薬剤を投与すると、リンパ管を介して下流リンパ節へと薬剤が送達される。この際、一部の薬剤は静脈系へも流出する。溶媒の浸透圧を高めることで、センチネルリンパ節への血液流入が誘導され、リンパ液の通路であるリンパ洞が拡張される。一方、溶媒の粘度を調整することで、薬剤をセンチネルリンパ節内に高濃度で滞留させるか、あるいは下流リンパ節へ効率的に送達するかを制御できる。これらの結果から、標的リンパ節や治療戦略に応じた溶媒設計が可能となり、臨床現場における薬剤調製の最適化に貢献する。

【用語解説】

注1. 浸透圧:水分を引き寄せる力。

注2. 粘度:液体が流れる際の抵抗(ねばり気)。

注3. 特定臨床研究(第Ⅰ相試験): 安全性などを確認する最初の臨床試験。現在、岩手医科大学および東北大学病院で実施中。

注4. センチネルリンパ節:がん細胞が最初に到達する「見張り」のリンパ節。

注5. オーダーメイド型溶媒設計:患者ごとのがんの進行状況(リンパ節の腫れ具合や転移の範囲)や、使用する薬剤の特性に合わせて、注入液の「浸透圧」や「粘度」を最適に調整すること。

【論文情報】

タイトル:Solvent osmolarity and viscosity regulate lymph node pharmacokinetics and perinodal dynamics in lymphatic drug delivery
著者: Taiki Shimano, Daiki Nagamatsu, Ryoichi Fukumura, Ariunbuyan Sukhbaatar, Shiro Mori, Tetsuya Kodama*
*責任著者:東北大学大学院医工学研究科 教授 小玉哲也
掲載誌:Biomedicine & Pharmacotherapy
DOI: 10.1016/j.biopha.2026.118985

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医工学研究科
腫瘍医工学分野
教授 小玉哲也(こだま てつや)
TEL: 022-717-7583
Email: kodama*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医工学研究科
総務係
Email: bme-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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