2026年 | プレスリリース・研究成果
樹皮資源を活用した高バイオマス複合材料の開発 ―力学特性に基づく生分解評価手法を確立―
【本学研究者情報】
〇環境科学研究科 教授 成田史生
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 未利用の樹皮資源を有効活用し、樹皮を60wt.%(注1)含有する資源循環型の高バイオマス複合材料を開発しました。
- 引張強さの低下と生分解度の間に指数関係が成立することを実証し、力学特性の変化から生分解の進行を定量評価できることを明らかにしました。
- 分子鎖切断理論に基づく力学−生分解連成モデルの定式化に初めて成功しました。
- 初期段階では十分な電気絶縁性能を示し、一定期間機能を保った後に分解する生分解性エレクトロニクス材料(注2)として、農業用資材や使い捨てセンサなどへの展開も期待されます。
【概要】
プラスチックごみによる環境負荷が世界的な課題となる中、生分解性材料や再生可能資源を活用した材料開発が強く求められています。一方で、森林資源の利用過程で大量に発生する樹皮は、十分に活用されないまま廃棄処理されているのが現状です。
東北大学大学院環境科学研究科博士課程のRova Lovisa大学院生(JSPS特別研究員)と、王真金助教、栗田大樹准教授、成田史生教授(工学部材料科学総合学科兼担)は、こうした課題に対し、樹皮を60wt.%含有する生分解性複合材料を作製し、分解の進行と力学特性の変化を同時に捉える評価手法の構築を試みました。
コンポスト(注3)および屋外土壌環境下での試験の結果、引張強さの低下と生分解度の間に指数関係が成立することを見いだし、分子鎖切断理論に基づくモデルによってその挙動を説明しました。また、本材料が初期段階では十分な電気絶縁性能を示すことから、一定期間機能を維持した後に分解する材料設計が可能であることを示しました。本研究は、生分解性材料を「どの程度分解したか」だけでなく、「いつまで機能するか」という観点から評価・設計する新たな方向性を提示するものです。
本研究成果は2026年1月20日、材料の劣化や分解現象を扱う専門誌 npj Materials Degradationに掲載されました。
図1. 樹皮−PBS複合材料の作製と構造。(a)粉砕した複合材料ペレットの外観、(b)引張試験に用いたダンベル形試験片の寸法および試験片外観、(c)作製した複合材料断面のデジタル顕微鏡像。
【用語解説】
注1. wt. %:全体の重さに対して、ある成分が何%含まれているかを示す値。
注2. 生分解性エレクトロニクス材料:役目を終えると自然に消える電子材料。一定期間またはある条件下(例えば水・熱・光・pH・酵素など)で消失するように設計された電子材料。
注3. コンポスト:有機物を微生物の働きにより発酵・分解して作製した堆肥。
【論文情報】
タイトル:Evaluating and Interpreting Biodegradability of a Tree Bark- Based Green Composite through Tensile Properties
著者:Lovisa Rova, Zhenjin Wang, Hiroki Kurita*, Fumio Narita*
*責任著者:東北大学大学院環境科学研究科 准教授 栗田 大樹、教授 成田 史生
掲載誌: npj Materials Degradation
DOI:10.1038/s41529-026-00740-9
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院環境科学研究科
教授 成田史生
TEL: 022-795-7342
Email: narita*material.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院環境科学研究科
情報広報室
TEL: 022-752-2241
Email: kankyo.koho*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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