2026年 | プレスリリース・研究成果
新しい結合形成戦略による高機能三次元多孔性材料の創製 ― アニオン性有機染料を高効率で除去可能なイミダゾール結合型COF ―
【本学研究者情報】
〇多元物質科学研究所 教授 根岸雄一
多元物質科学研究所 講師 Das Saikat
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- これまで必要とされてきた複雑な多成分反応(デブス-ラジシェフスキー反応)(注1)を用いず、二種類の分子のみを組み合わせる手法により、イミダゾール結合の形成に成功しました。
- 化学的安定性と分極性に優れたイミダゾール結合を三次元の高連結ネットワークへ導入し、イミダゾール結合を有する高連結三次元共有結合性有機構造体(COF)(注2)の合成に世界で初めて成功しました。
- 得られたCOF(TU-123)が中性条件下でカチオン性を示す特性を活かし、アニオン性染料を選択的かつ高容量で吸着できることを明らかにしました。
【概要】
工業排水や染色工程から排出される有機染料(注3)は、水環境に深刻な影響を及ぼす汚染物質の一つであり、その効率的かつ持続可能な除去技術の確立が強く求められています。特に、化学的に安定で、選択的に有害物質を除去できる多孔性材料の開発は、環境浄化分野における重要な研究課題です。
東北大学多元物質科学研究所の根岸 雄一 教授、Das Saikat 講師らの研究グループは、分子を共有結合によって三次元的に連結した共有結合性有機構造体(COF)に着目し、従来とは異なる結合形成戦略を用いることで、新規三次元多孔性材料「TU-123」を開発しました。これまでイミダゾール結合を有するCOFの多くは、複数の反応成分を必要とする合成法に依存しており、構造設計の自由度や三次元化には制約がありましたが、本研究ではアルデヒドとアミンの二成分のみを用いる環化縮合反応を採用することで、これらの課題を克服しました。
得られたTU-123は、水溶液中の中性条件において表面が正に帯電する特性を示し、負に帯電したアニオン性有機染料を静電的に引き寄せます。実際に、代表的なアニオン性染料であるアシッドオレンジ7に対して、高い吸着容量(495.07 mg g⁻1)と除去効率(86.08%)を示すことが確認されました。
これらの成果は、高連結三次元COFの構造設計に新たな指針を与えるとともに、環境浄化材料としてのCOFの応用可能性を大きく広げるものであり、持続可能な排水処理技術の実現に貢献することが期待されます。
本研究成果は、2026年1月23日公開の学術誌Journal of the American Chemical Society に掲載されました。
図1. イミダゾール結合型高連結三次元COF TU-123を用いた、アニオン性染料分子吸着の概念図。TU-123は中性条件下で表面が正に帯電する(カチオン性)ため、アシッドオレンジ7などの負に帯電する(アニオン性)染料分子を静電相互作用により引き寄せます
【用語解説】
注1. デブス-ラジシェフスキー(Debus-Radziszewski)反応
アルデヒド、ジカルボニル化合物、アミン、アンモニアなど複数の反応成分を同時に用いてイミダゾール環を形成する古典的な多成分反応である。一般に反応設計が複雑になりやすく、生成物の構造制御や高次元ネットワークへの応用には制約がある。
注2. 共有結合性有機構造体(COF: Covalent Organic Framework)
COFは、有機分子同士が強固な共有結合によって周期的に連結された結晶性多孔材料で、規則正しい細孔構造、高い比表面積、設計自由度の高さが特徴。分子設計により官能基や配位部位を精密に配置できるため、触媒、分離、エネルギー貯蔵など多様な機能材料として注目されている。本研究では、複雑な構造のモノマーを用いて三次元高連結COFを構築しつつ、イミダゾール結合を構造内に含有させることで、染料分子吸着の最適化を実現した。
注3. 有機染料
有機染料とは、炭素骨格を持つ有機化合物からなる着色物質の総称であり、発色団(光を吸収して色を生み出す部分)と助色団(その色を強めたり性質を調整したりする部分)を有して可視光を選択的に吸収する。繊維、紙、皮革の染色をはじめ、インク、顔料、分析試薬などに広く利用されている。水溶性・疎水性やカチオン性・アニオン性など多様な性質を示し、環境中での吸着や分解挙動が研究対象となる。
【論文情報】
タイトル: Beyond the Multicomponent Debus-Radziszewski Route: Two-Component Cyclocondensation Constructing a 12+3-Connected aea Topology Three-Dimensional Imidazole-Linked COF for Sustainable Wastewater Treatment
著者:入江 司¹、佐々木 康貴¹、野崎 未佳¹、川脇 徳久¹、Das Saikat*¹、根岸 雄一*¹(1. 東北大学多元物質科学研究所)
*責任著者:東北大学 多元物質科学研究所 教授 根岸 雄一
東北大学 多元物質科学研究所 講師 Das Saikat
掲載誌:Journal of the American Chemical Society
DOI:10.1021/jacs.5c19590
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
教授 根岸雄一
TEL: 022-217-5604
Email: yuichi.negishi.a8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
東北大学多元物質科学研究所
講師 Das Saikat
TEL: 022-217-5606
Email: das.saikat.c4*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
TEL: 022-217-5198
Email: press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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