2026年 | プレスリリース・研究成果
腸内のかき混ぜ(ぜん動)が栄養吸収を左右 ─炎症性腸疾患などにおける吸収低下の理解に道筋─
【本学研究者情報】
〇大学院工学研究科ファインメカニクス専攻 准教授 菊地謙次
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 腸内のかき混ぜは、ぜん動(注1)によって腸内に流れ(輸送)を生み出し、栄養を腸壁の近くまで運んでいることを示しました。
- ゼブラフィッシュ幼生を用いて、腸の動き・腸内の流れ・栄養吸収を直接可視化し、吸収量が腸内の流れの強さで定量的に説明できることを明らかにしました。
- 炎症時にはかき混ぜが弱まり腸内の流れが停滞し、栄養が届きにくくなり吸収が低下すること、健康な状態と炎症状態のデータが同じ関係で整理できることを示しました。
【概要】
栄養が腸から吸収されるためには、栄養分子が腸壁の近くまで運ばれ、そこで取り込まれる必要があります。腸は自ら動くぜん動によって内容物を混ぜたり流したりし、内容物の運ばれ方を調整していると考えられますが、その仕組みと吸収との関係は十分に解明されていませんでした。
東北大学大学院工学研究科の菊地謙次准教授らの研究グループは、体が透明で観察に適したゼブラフィッシュ幼生を用い、腸の動き(ぜん動)、腸内の流れ、栄養の吸収を同時に測定しました。 その結果、腸の「かき混ぜ」が腸内の流れを左右し、栄養が腸壁まで届きやすくなることで吸収量が変化することが分かりました。また、炎症が起きると腸の形や動きが変化して流れが弱まり、吸収が低下することも示されました。
本研究により、炎症時の吸収低下を、腸壁の機能だけでなく、腸内での「流れ(輸送)」の弱まりとして捉え直し、定量的に説明できる道筋が示されました。
本研究成果は、2026年2月3日(米国時間)に流体科学分野の専門誌Physics of Fluidsにオンライン掲載されました。
図1. ゼブラフィッシュ幼生(モデル生物:生命現象を研究するために選ばれた共通の生物)の通常時(図1A)と腸炎症誘発時における腸の形状計測(図1B・C)と腸運動による腸内の流動性ペクレ数(腸の活発度)と腸壁から吸収されたグルコースの吸収量シャーウッド数(栄養吸収度)との関係(図1D)。栄養吸収度は腸内流動性の二乗に比例して増加する関係を定量的に解明。
【用語解説】
注1. ぜん動
腸が波のように縮んだり広がったりして、中身を押し流したり混ぜたりする動き。
【論文情報】
タイトル:A Taylor dispersion framework links peristaltic flow to glucose absorption in the intestine of zebrafish larvae
著者:Jiawei Huang, Keiko Numayama-Tsuruta, Takuji Ishikawa, Kenji Kikuchi*
*責任著者:東北大学大学院工学研究科 准教授 菊地 謙次
掲載誌:Physics of Fluids
DOI:10.1063/5.0311805
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科ファインメカニクス専攻 / 東北大学高等研究機構
准教授(東北大学ディスティングイッシュトリサーチャー)
菊地 謙次(きくち けんじ)
Email: k.kikuchi*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科情報広報室
担当 沼澤 みどり(ぬまざわ みどり)
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

![]()
東北大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています