2026年 | プレスリリース・研究成果
なぜ粗い研磨でステンレス鋼は錆びやすくなるのか? -MnS介在物に着目した耐食性低下の機構解明-
【本学研究者情報】
〇大学院工学研究科知能デバイス材料学専攻 助教 西本昌史
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【発表のポイント】
- ステンレス鋼(注1)において、機械研磨後の表面粗さが大きいほど耐食性(錆びにくさ)が低下する理由を明らかにしました。
- ステンレス鋼表面に点在するMnS介在物(注2)と研磨傷が交差する箇所が、腐食の発生起点となることを見出しました。
- 粗い機械研磨による耐食性の低下は、従来から指摘されていた不働態皮膜(注3)の厚さの不均一化だけではなく、MnS介在物の変形や鋼中への埋没といった形態変化が最も重要な要因であることを明らかにしました。
【概要】
ステンレス鋼は高い耐食性を有していますが、海水などの塩化物水溶液にさらされる環境では、表面に腐食が生じることがあります。ステンレス鋼は一般的に、美観性・清浄性の向上を目的として、研磨による平滑化が施されますが、研磨後の表面粗さが大きいほど耐食性が低下するという課題が知られています。
東北大学大学院工学研究科の王思奇大学院生、西本昌史助教、武藤泉教授は、粗い機械研磨によりステンレス鋼の耐食性が低下する要因を詳細に解析し、従来から指摘されていた不働態皮膜の厚さの不均一化だけではなく、MnS介在物の変形や鋼中への埋没といった形態変化が最も重要な要因であることを明らかにしました。本成果は、ステンレス鋼の表面加工によって腐食が起こりやすくなる仕組みを明確に示したものであり、ステンレス鋼製の機械研削が不可欠な化学プラントや産業・医療機器における、耐食性および信頼性の向上に貢献することが期待されます。
本成果は、2026年2月4日(現地時間)に材料の劣化に関する学術誌npj Materials Degradationにオンライン掲載されました。
図1. (a)平滑なステンレス鋼表面のMnS介在物の走査型電子顕微鏡写真およびエネルギー分散型X線分光法による元素マップ。(b)粗い機械研磨を施したステンレス鋼表面に存在するMnS介在物の走査型電子顕微鏡写真および元素マップ。研磨によりMnS介在物が変形し、一部にき裂や鋼中への埋没が見られる。また、研磨傷とMnS介在物が交差する箇所において孔食が観察されている。
【用語解説】
注1. ステンレス鋼
鉄(Fe)に約11%以上のクロム(Cr)を添加して耐食性を高めた鋼。
注2. MnS介在物
ステンレス鋼の製造工程において微量に添加されるマンガン(Mn)と、完全に除去しきれない硫黄(S)が化合して形成され、鋼中に残存する介在物。
注3. 不働態皮膜
ステンレス鋼の表面に形成される、目に見えないほど薄い酸化皮膜(厚さ数ナノメートル程度)。表面を保護し、耐食性を高める役割を果たしている。
【論文情報】
タイトル:Grinding-induced degradation in the pitting corrosion resistance of stainless steel: insights into passive film and MnS
著者:Siqi Wang*1, Masashi Nishimoto*2, Izumi Muto
*責任著者:*1東北大学大学院工学研究科 大学院生 王 思奇
*2東北大学大学院工学研究科 助教 西本 昌史
掲載誌:npj Materials Degradation
DOI:10.1038/s41529-026-00750-7
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科
助教 西本 昌史
TEL: 022-795-7299
Email: masashi.nishimoto.b8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科情報広報室
担当 沼澤 みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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