2026年 | プレスリリース・研究成果
「高密度化×極微小化」で膵臓がんまで届く抗がん剤ナノ粒子の作製に成功
【本学研究者情報】
〇多元物質科学研究所 教授 笠井均
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- プロドラッグ(注1)のみで構成される約30 nmのナノ粒子が高濃度に分散した薬剤(極微小ナノ・プロドラッグ)の開発に成功しました。
- 上記極微小ナノ・プロドラッグを、膵臓に腫瘍が形成したマウスに投与したところ、腫瘍の成長を抑制することを確認しました。
- 従来の薬剤が届きにくい膵臓がんに送達可能な薬剤形態を実現し、今後、実用化に向けて臨床研究の進展が期待されます。
【概要】
膵臓がんは、周辺の間質が発達しており、抗がん剤が腫瘍内部へ届きにくい難治性のがんです。サイズを粒径200 nm以下に制御したナノ薬剤をがん病巣へ効率的に集積させる研究が活発に行われてきましたが、膵臓がんの場合、より極微小な30 nm程度でなければ効率的に集積しないことが報告されていました。
東北大学多元物質科学研究所の笠井均教授らの研究グループは、膵臓がん周辺の間質(注2)を通過し、高い薬理活性と低い毒性を両立する抗がん剤ナノ粒子の作製に成功しました。本研究グループは、プロドラッグのみで構成され、従来型ポリマーキャリア系ナノ薬剤に比べて高密度であることを特徴とするナノ薬剤「ナノ・プロドラッグ」を提案してきました。今回、30~400 nmで自在に粒径を制御したナノ・プロドラッグを作製し、膵臓がんに対するサイズ依存性と薬理効果を評価しました。
本極微小ナノ・プロドラッグは、サイズの大きいナノ・プロドラッグ(200 nm)と比較して高い抗腫瘍活性を示しました。さらに、がん細胞内でSN-38(抗がん活性化合物)(注3)が選択的に遊離しやすい特徴を有するため、試験を通じて重篤な毒性は確認されず、臨床研究への進展が期待されます。
本研究の成果は、1月30日に、学術誌RSC Pharmaceuticsに掲載されました。
図1. 異なるサイズで作製したナノ・プロドラッグのSEM像
【用語解説】
注1. プロドラッグ:
そのままでは不活性な、もしくは明らかに活性の低い形態で投与される医薬品。プロドラッグは投与されると、生体による代謝作用を受けて活性代謝物へと変化し、薬効を示す。ナノ・プロドラッグはプロドラッグのみで構成されるナノ粒子である。
注2. 膵臓がん周辺の間質:
線維芽細胞やコラーゲンなどの細胞外マトリックスで構成される組織。膵臓がん周辺は間質が発達しており、抗がん剤が腫瘍内部へ届きにくい難治性のがんとして知られている。
注3. SN-38:
I 型トポイソメラーゼ阻害薬であり、非常に高い抗がん活性を示す。SN-38は水に難溶であるため、水溶性のプロドラッグである塩酸イリノテカンの形態でがん治療に用いられている。
【論文情報】
タイトル:Overcoming Stromal Barriers in Pancreatic Cancer via Size-Engineered Carrier-Free Nano-Prodrugs
著者:Mengheng Yang, Ryuju Suzuki, Yoshitaka Koseki, Shuto Kodera, Ken Saijo, Hisato Kawakami, Keita Tanita, Sanjay Kumar, Kouki Oka, Hitoshi Kasai*
*責任著者:東北大学多元物質科学研究所 教授 笠井 均
掲載誌:RSC Pharmaceutics
DOI:10.1039/D5PM00364D
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
教授 笠井 均(かさい ひとし)
TEL: 022-217-5612
Email: kasai*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
広報情報室
TEL: 022-217-5198
Email: press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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