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家庭での尿検査を可能にする新技術 ―クレアチニン補正を実現する簡易・高感度バイオセンサを開発―

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科機械機能創成専攻 教授 小野崇人
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 尿中バイオマーカー(注1の正確な評価に不可欠なクレアチニン補正(注2を在宅で実現するための新しい測定技術を提案しました。
  • 参照電極(注3を必要としない二電極構造を採用し、在宅利用に適したシンプルで小型・低コストなセンサ構造を実現しました。
  • 白金ナノ粒子(注4と酵素からなる電気抵抗体の抵抗変化で計測する抵抗変化型センサ(ケミレジスタ型バイオセンサ(注5)により、簡易かつ高感度なクレアチニン測定が可能であることを実証しました。
  • 本技術は、在宅健康モニタリングや予防医療など、幅広い健康指標への応用が期待されます。

【概要】

尿は、健康状態や疾患リスクを知るための重要な情報を含む身近な検体ですが、摂取水分量や個人差によって濃度が大きく変動するため、正確な評価には補正が欠かせません。尿中バイオマーカーの評価では、一般にクレアチニン補正が用いられますが、従来は家庭で簡便かつ高精度に測定できる技術がありませんでした。

東北大学大学院工学研究科の小野崇人教授と大学院医学系研究科の阿部高明教授の研究グループは、白金ナノ粒子と酵素反応(注6を利用した抵抗変化型バイオセンサ(ケミレジスタ型バイオセンサ)を新たに開発し、家庭での尿検査に適した簡易かつ高精度なクレアチニン濃度の検出に成功しました。本技術により、クレアチニン補正を前提とした尿中バイオマーカー計測を家庭レベルで実現する道が開かれました。今後は、在宅健康モニタリングや予防医療への応用が期待されます。

本研究成果は2026年2月13日付で科学誌Microsystem & Nanoengineeringに掲載されました。

図1. 開発した抵抗型バイオセンサの概要と動作原理。a. センサ構造の模式図。金属電極間に化学抵抗体が形成されており、複数の酵素および白金ナノ粒子が高分子マトリクス中に担持された構造を有する。b. 分析対象物質であるクレアチニンが酵素によるカスケード反応を受け、過酸化水素(H₂O₂)が生成される。c. 生成したH₂O₂が白金ナノ粒子表面で酸化・還元反応を起こし、電荷移動および伝導経路の変化を通じて化学抵抗体の電気抵抗が変化する。

【用語解説】

注1. バイオマーカー
体内の状態や疾患リスクを反映する指標となる物質。尿や血液中に含まれる成分を測定することで、健康状態や病気の兆候を把握できる。

注2. クレアチニン補正
クレアチニンは、筋肉の代謝により体内で生成され、尿中に排出される物質。尿検査では、尿の希釈や濃縮の影響を補正する基準物質として広く用いられている。クレアチニン補正は、尿中バイオマーカーの濃度を、同時に測定したクレアチニン濃度で補正する方法。水分摂取量や個人差による尿濃度のばらつきを抑え、より正確な評価を可能にする。

注3. 参照電極
電気化学測定において、電位が一定に保たれる基準となる電極。測定対象の電極で生じる電気的変化を安定して評価するために用いられる。従来の電気化学センサでは参照電極を含む三電極構成が一般的であったが、構造が複雑になり、小型化や使い捨て化が難しいという課題があった。

注4. 白金ナノ粒子
直径数ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)の白金粒子。高い触媒活性と優れた電気的特性を持ち、化学反応や電荷移動を高感度に検出できる。

注5. ケミレジスタ型バイオセンサ
化学反応によって生じる材料の電気抵抗変化を検出原理とするセンサ。本研究では、酵素反応によって生じる反応生成物により電気抵抗が変化する仕組みを利用している。

注6. 酵素反応
生体内で「触媒」として働く酵素が、特定の物質を選択的に分解・変換する反応。本研究では、尿中のクレアチニンに特異的に反応する酵素を用い、その反応の結果を電気信号として読み取っている。

【論文情報】

タイトル:High sensitivity chemiresistive biosensor prepared via enzyme-catalyzed redox and nanoparticle conduction network
著者:Yi-Hsiu Kao, Nguyen Van Toan, Takaaki Abe, Ioana Voiculescu, and Takahito Ono*
*責任著者:東北大学大学院工学研究科 機械機能創成専攻 教授 小野崇人
掲載誌:Microsystem & Nanoengineering
DOI:10.1038/s41378-025-01155-3

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科機械機能創成専攻
教授 小野崇人
TEL: 022-795-5806
Email: takahito.ono.d4*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科
情報広報室
担当 沼澤みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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