2026年 | プレスリリース・研究成果
実用化の壁を超えるスピン力学センサの誕生 ―高感度・高耐久を両立する新しいフィルム型ひずみゲージ―
【本学研究者情報】
〇ナノマテリアル機能創造スマートラボ 教授 千葉大地
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 従来のフィルム型ひずみゲージの感度を圧倒的に凌駕(りょうが)する「スピン力学センサ」が、10万回を超える引っ張り試験後も特性劣化を示さず、実使用環境を想定した耐久性を世界で初めて実証
- 繰り返し大きく変形するフレキシブル基材上での長期安定動作は未検証であったが、高感度と高耐久性の両立を証明
- 高感度・低消費電力・低電圧駆動に加え、実用化の障壁となっていた高耐久性を兼ね備えた新センサの登場により、フィジカルとサイバー空間をつなぐインターフェースの高度化への貢献に期待
【概要】
大阪大学産業科学研究所の千葉大地教授(兼 東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター センター長)らの研究グループは、磁性体ナノ薄膜からなる磁気トンネル接合(MTJ)※1 素子をフレキシブル基材上に形成した「スピン力学センサ」において、実使用環境を想定した高い耐久性を世界で初めて実証しました
本研究において、フレキシブル基材上に形成したスピン力学センサに対して、10万回を超える繰り返し引っ張り試験を行った結果 、特性劣化を示すことなく安定した動作を維持することを確認しました(図1) 。
これまで、MTJは磁気メモリや磁界センサとして実用化されてきた一方で、繰り返し大きく変形するフレキシブル基材上における長期安定動作については十分に検証されていませんでした。本研究成果は、高感度という特長を保ったまま高耐久性を両立できることを示したものであり、スピン力学センサが実用的なフィルム型ひずみゲージとして利用可能であることを明確に示しています。
さらに、本成果は、高感度・低消費電力・低電圧駆動という特長に、実用化の壁を超える耐久性が加わった新センサの登場を意味し、フィジカルな情報をサイバー空間へと高精度につなぐ次世代センシング技術の基盤となることが期待されます。
本研究成果は、米国科学誌 『APL Electronic Devices』 に、2月17日(火)(現地時間)に公開されます。
図1:10万回の引っ張り試験の模式図(上)と結果(下)。
フレキシブル基材上に、MTJの上下の磁性層に電気的な接続をするための2つの電極(Electrodes)を有するマイクロメートル(100万分の1メートル)サイズのMTJを形成してスピン力学センサを作製し(右上の四角枠内の写真参照)、模式図のように引っ張り試験機に装着した。1%以上のひずみを繰り返し与えて引っ張り試験を行った結果、下のグラフ(縦軸:R = 抵抗、横軸:N = 引っ張り回数)のようにセンサの無ひずみ時の抵抗は10万回以上の引っ張り試験の間一定であり、素子の劣化がないことが証明された。真ん中の3つのグラフ(横軸:e = ひずみ量)が示すように、センサ特性にも劣化は見られなかった。
【用語解説】
※1 磁気トンネル接合(MTJ)
2層の磁性ナノ薄膜の間に、非常に薄い絶縁体薄膜(トンネル障壁)を挟み込んだ構造を持つ代表的なスピントロニクスデバイスです。磁化状態に応じて電気抵抗が変化する特性を利用し、超微小な磁界を検出する磁気センサや、ハードディスクの読み取りヘッド、固体磁気メモリ(MRAM)の記録素子として実用化されています。
【論文情報】
タイトル:"Flexible magnetic tunnel junction-based strain sensor with over 100,000-cycle endurance"
著者名:Daichi Chiba, Akiko Imai, and Akira Ando
DOI :10.1063/5.0293081
問い合わせ先
東北大学 国際放射光イノベーション・スマート研究センター SRIS戦略室
TEL: 022-217-5139
E-mail: sris-senryaku*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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