2026年 | プレスリリース・研究成果
簡単!カーボンナノチューブを水に分散 二酸化塩素で表面を穏やかに酸化し、高い導電性を維持
【本学研究者情報】
〇学際科学フロンティア研究所(兼)大学院理学研究科化学専攻 特任准教授 上野裕
研究室ウェブサイト
〇学際科学フロンティア研究所 准教授 伊藤隆
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 強酸や界面活性剤を使わず、常温条件下でカーボンナノチューブ(CNT)を水中に安定分散させることに成功
- CNTは、水に溶けにくく凝集しやすいため、実用化には界面活性剤や強酸による処理が必要で、導電性の低下や材料劣化が問題となっていたが、CNTの構造を保ったまま表面のみを酸化し,導電性の低下を最小限に抑制することや界面活性剤フリーで、1週間以上沈殿しない安定な水分散液を実現
- 薬、エネルギー分野など、幅広い応用や環境調和性と実用性を両立させる次世代ナノ材料プロセスの実現に期待
【概要】
大阪大学先導的学際研究機構の大久保敬教授、板橋勇輝特任講師(常勤)、東北大学学際科学フロンティア研究所•大学院理学研究科の上野裕特任准教授、伊藤隆准教授、福村裕史名誉教授の研究グループは、二酸化塩素※1を用いた新しい表面酸化法を開発し、カーボンナノチューブ(CNT)※2を水中に安定分散させることに成功しました(図1)。
CNTは、極めて高い導電性と機械強度を併せ持つ一次元ナノ材料として、電子デバイスや医療・バイオ分野に至るまで、幅広い応用が期待されています。しかし、水に溶けにくく凝集しやすいため、実用化には界面活性剤や強酸による処理が必要で、これらの方法では導電性の低下や材料劣化が問題となっていました。
本研究では、常温条件下で二酸化塩素を作用させることで、CNT表面にヒドロキシ基やカルボニル基、カルボキシ基などの極性官能基を選択的に導入し、界面活性剤を用いずとも1週間以上沈殿しない安定な水分散を実現しました。さらに、高い導電性を保持しており、界面活性剤処理と同等の電気特性を示します。
本研究成果は、水系プロセスによるCNT材料開発を可能にする環境調和型技術として、科学技術だけでなく産業界など幅広い分野への応用が期待されます。
本研究成果は、英国化学誌「Nanoscale」にオンライン速報版で公開されました。
図1 混ぜるだけでカーボンナノチューブが水に分散する
【用語解説】
※1 二酸化塩素
Chlorine Dioxide, ClO₂。塩素と酸素からなる化学物質で、亜塩素酸ソーダや塩素酸ソーダから容易かつ安価に作り出すことができる。強い酸化力を持ちながら反応選択性に優れる。水処理や殺菌分野で広く利用されており、適切な条件下では過度な分解を引き起こさず、表面や反応点を選択的に酸化できる特徴を持つ。本研究では、この特性を活かしてカーボンナノチューブ表面を穏やかに酸化し、水分散性を付与するために用いられている。
※2 カーボンナノチューブ(CNT)
Carbon Nanotube。炭素原子が六角形格子状につながり、円筒状に巻かれたナノメートルサイズの材料。非常に高い導電性、機械強度、化学的安定性を併せ持ち、電子デバイス、エネルギー材料、複合材料、医療分野など幅広い応用が期待されている。一方で、疎水性が高く水中で凝集しやすいため、加工性の向上が実用化に向けた重要な課題となっている。
【論文情報】
タイトル:D:"Aqueous dispersion of carbon nanotubes by chlorine dioxide oxidation"
著者::"Aqueous dispersion of carbon nanotubes by chlorine dioxide oxidation"
*責任著者:東北大学多元物質科学研究所 助教 新家寛正
掲載誌:Nanoscale
DOI:10.1039/D5NR05444C
問い合わせ先
東北大学 学際科学フロンティア研究所
特任准教授 上野 裕(うえの ひろし)
TEL:022-795-4353
E-mail: hiroshi.ueno.d5*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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