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他人まかせでない精子幹細胞の足場づくり ―自ら基底膜タンパク質を作り、生存環境を維持していた!―

【本学研究者情報】

〇農学研究科 准教授 原健士朗
ウェブサイト

【発表のポイント】

  • ほ乳動物の精子形成では、精子のもととなる精子幹細胞(注1が精細管(注2の基底膜に沿って遊走しながら精子を形成しています。その遊走の「足場(細胞がくっついて進むための下地)」となる基底膜タンパク質を、精子幹細胞自らも作っていることを発見しました。
  • このタンパク質を自ら作ることが出来ないと、精子幹細胞が死にやすくなることが判明しました。
  • これまで、精子幹細胞の足場は周囲の細胞のみが作ると考えられてきましたが、精子幹細胞自身も足場づくりに関わることが分かりました。

【概要】

ほ乳動物の精子形成では、精子のもととなる「精子幹細胞」が、精細管の基底膜上を移動しながら増殖と分化を両立することで、継続的な精子生産を可能にしています。これまで、基底膜の形成は精子幹細胞の周囲の体細胞(注3が行うと考えられており、精子幹細胞自身の役割は不明でした。

東北大学大学院農学研究科の原健士朗准教授らの研究グループは、性成熟マウスの精子幹細胞も、基底膜の構成タンパク質であるラミニンを発現(注4し、これを挙動制御のために即座に利用していることを見出しました。この現象から、ラミニン発現を通じ、精子幹細胞は周囲の基底膜に影響を与え、自らの生存と挙動を調節していることが示唆されます。

本成果は、精子幹細胞の自律的な性質を明らかにした基礎知見です。将来的に家畜やヒトの精子幹細胞を扱う培養・操作技術の発展につながることが期待されます。

本研究成果は2026年2月3日に国際誌Biology of reproductionに掲載されました。

図1. マウス精巣における精子幹細胞の局在とラミニン発現。(A) マウス精巣における精細管の模式図です。精子幹細胞は、基底膜上に散在し、常に遊走しています。(B)図中(A)の一部の拡大図です。精子幹細胞を含む未分化型精原細胞が精細管内腔方向に分化し、精子形成が起こります。(C-E)成熟(8週齢)マウス精巣の免疫染色像です(マゼンダ:ラミニン[pan-Lam]、緑:精子幹細胞[GFRα1]、青:細胞核[Hoechst])。(C)の一部を拡大したものが(D, E)です。(D)の矢頭はラミニンを発現する精細管周囲の筋様細胞を、(E)の矢頭はラミニンを発現する精子幹細胞を示しています(スケールバーは20 μm)。

【用語解説】

注1. 精子幹細胞:精子を持続的に生成するために必須の細胞である。精細管の基底膜上を遊走しながら、増殖と分化を行う能力を持つ細胞である。

注2. 精細管:精巣内部に集合する細い管であり、精子の形成が起こる場。

注3. 周囲の体細胞:ここでは精子形成を支持する体細胞であるセルトリ細胞や精細管を構築する筋様細胞を指す。

注4. 発現:タンパク質を発現するとは、DNAからRNAが転写されタンパク質が合成される一連のプロセスを指す。

【論文情報】

タイトル:Undifferentiated Spermatogonia Modulate Their Behavior via the Expression of Basement Membrane Protein Laminin
著者:Yusuke Kawabe, Saya Yamada, Yuichi Shima, Kentaro Tanemura,Shosei Yoshida, Kenshiro Hara*
*責任著者:東北大学大学院 農学研究科 准教授 原 健士朗
掲載誌:Biology of Reproduction
DOI:10.1093/biolre/ioag032.

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院農学研究科
動物生殖科学分野
准教授 原 健士朗(はら けんしろう)
TEL: 022-757-4306
Email: kenshiro.hara.b6*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院農学研究科
広報室
Email: agr-koho*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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