2026年 | プレスリリース・研究成果
活性酸素が引き起こす見逃されていたDNA損傷プロセス ― 光反応による「脱塩基部位」の生成を発見、次世代の光機能性DNAを実現する精密設計の基盤へ ―
【本学研究者情報】
〇多元物質科学研究所 助教 山野雄平
多元物質科学研究所 准教授 鬼塚和光
多元物質科学研究所 教授 永次史
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 光触媒(注1)を用いたDNAの光酸化反応において、活性酸素の一種である一重項酸素(注2)がDNAに作用し、「脱塩基部位(APサイト)(注3)」を生じる新しいDNA損傷プロセスを明らかにしました。
- 従来手法では検出が困難で見逃されてきたこの現象を、質量分析に基づく独自の解析アプローチにより、直接かつ定量的に評価することに成功しました。
- DNA鎖の末端など、周囲の溶媒に接触しやすい位置にあるグアニン残基でAPサイトが生成しやすいことを突き止め、副反応を抑えた光機能性DNAの精密設計につながる重要な指針を示しました。
【概要】
光や炎症などで生じる酸化ストレスは、DNAに損傷を与え、老化やがんをはじめとする疾患の原因となることが知られています。しかし、DNAの損傷プロセスには、まだ解明されていない部分が残されています。
東北大学多元物質科学研究所の山野雄平助教、鬼塚和光准教授、永次史教授らの研究グループは、光触媒による光酸化反応において、DNA中のグアニン残基から「脱塩基部位(APサイト)」が生成する未知の損傷プロセスを明らかにしました(図1)。また、質量分析に基づく独自の解析法により、酸化されたDNAをオリゴマー(注4)の状態で直接解析しました。その結果、APサイトが光触媒から生成する活性酸素(一重項酸素)とグアニン残基の反応によって生じることを突き止めました。さらに、DNA鎖末端など周囲の溶媒に接触しやすい位置のグアニン残基でAPサイトが生成しやすいことも確認されました。
本研究は、DNAの新しい損傷プロセスを明らかにするものであり、DNAを利用した光機能性材料の開発や、光バイオ技術における合理的な分子設計に直結する重要な知見を提供します。
本成果は、2026年3月20日付で科学誌Communications Chemistryに掲載されました。
図1. 本研究の概要 光触媒による光酸化反応によって既知の酸化損傷体(Gh、Sp)に加え、脱塩基部位(APサイト)と呼ばれるDNA損傷が生じる現象を発見した。
【用語解説】
注1. 光触媒: 光のエネルギーを吸収して、特定の化学反応を促す働きを持つ物質のことです。本研究では、光を当てると一重項酸素を効率よく発生させるローズベンガルなどの色素分子が用いられました。
注2. 一重項酸素: 活性酸素の一種です。本研究では、光触媒が光のエネルギーを吸収し、そのエネルギーを周囲の通常の酸素分子に受け渡すことで発生します。
注3. 脱塩基部位(APサイト): DNAを構成する重要なパーツである「核酸塩基」が脱落して失われてしまった損傷部分のことです。芳香族部分を持たないため、従来のUV吸収を用いた分析では検出が困難でした。
注4. オリゴマー: 少数の構成単位(モノマー)が結合してできた重合体のことです。本研究においては、ヌクレオチド(核酸の構成単位)が連なった短いDNAの鎖のことを指します。
【論文情報】
タイトル: Singlet oxygen-mediated photocatalytic generation of abasic sites in DNA
著者: Yuuhei Yamano*, Kazumitsu Onizuka*, Okan Altan, Madoka Sasaki, Ahmed Mostafa Abdelhady, Shigeki Sasaki, and Fumi Nagatsugi*
*責任著者:東北大学 多元物質科学研究所 助教 山野雄平、東北大学 多元物質科学研究所 准教授 鬼塚和光、東北大学 多元物質科学研究所 教授 永次史
掲載誌: Communications Chemistry
DOI:10.1038/s42004-026-01979-8
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
助教 山野 雄平(やまの ゆうへい)
TEL: 022-217-5634
Email: yuuhei.yamano.c4*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
東北大学多元物質科学研究所
准教授 鬼塚和光(おにづか かずみつ)
TEL: 022-217-5634
Email: kazumitsu.onizuka.d7*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
東北大学多元物質科学研究所
教授 永次 史(ながつぎ ふみ)
TEL: 022-217-5633
Email: fumi.nagatsugi.b8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
TEL: 022-217-5198
Email: press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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