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抗マラリア性をもつ新規天然物 ストラセリオリドAの効率的な合成に成功

【本学研究者情報】

〇大学院生命科学研究科 助教 梅原厚志
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • ストラセリオリドは抗マラリア活性を有する新規マクロリド天然物であり、合成的にチャレンジングな18員環構造を有しています。
  • 今回、ニッケル触媒を用いたカップリング反応を駆使してストラセリオリドAの効率的な化学合成に成功しました。
  • 本研究は、ストラセリオリド類縁体の合成や構造活性相関研究につながる重要な成果であり、新規医薬品の開発への貢献が期待できます。

【概要】

マラリアは、1年間で約2億5千万人が感染し、年間の死亡者数は約62万人と推定されている深刻な感染症です。現在のマラリア治療法として、多剤を組み合わせる方法が最も一般的です。しかし、マラリア治療薬に対する薬剤耐性の発生が近年深刻な問題となりつつあります。したがって、新しい作用機序を有する有効な低分子薬の開発が強く求められています。この様な背景の中、最近新規マクロリド(注1)であるストラセリオリドA-Dが発見されました。これら天然物は、強力な抗マラリア活性を有しており、次世代の抗マラリア薬開発の出発点となるリード化合物(注2)として期待が持たれています。

東北大学大学院生命科学研究科の梅原厚志助教、佐々木誠教授は、ニッケル触媒を用いたカップリング反応を駆使した収束的(注3)な合成戦略によりストラセリオリドAの全合成(注4)に成功しました。既存の合成法よりも約4倍となる高い効率性(総収率4.3%)で全合成を実現しています。本研究は、ストラセリオリド類縁体の合成や構造活性相関研究につながる重要な成果であり、新規医薬品の開発への貢献が期待できます。

本成果はアメリカ化学会誌The Journal of Organic Chemistryに3月26日付で掲載されました。

図1. ストラセリオリドの化学構造

【用語解説】

注1. マクロリド:マクロリドは、大きな環状構造を有することが特徴であり、主に細菌感染症の治療等に用いられる有用な有機化合物群である。代表的な薬剤として、エリスロマイシンやクラリスロマイシンなどがある。

注2. リード化合物: 医薬品開発の出発点となる新薬候補化合物のこと。天然物は、構造および生物活性の多様性が高く、有用なリード化合物となる。

注3. 収束的: 合成経路を設計する方法には、1つの出発原料から直線的に経路をたどって目的物を得る「直線型合成」(linear synthesis;リニア合成)と、複数の出発原料から複数の中間体をそれぞれ合成し、適当な段階でこれら中間体を結合させて目的物を得る「収束型合成」(convergent synthesis;コンバージェント合成または並列型合成)がある。複雑な構造を持つ巨大分子を合成する場合には、総収率などの点で収束型合成が圧倒的に有利である。

注4. 全合成:天然物を適切にデザインした合成経路を経て人工化学合成すること。多段階の精密有機合成反応を駆使して達成される。

【論文情報】

タイトル:Total Synthesis of Antimalarial Macrolide Strasseriolide A by Ni/Zr-Mediated Reductive Ketone Coupling
著者:梅原厚志*、川北皓平、佐々木誠
*責任著者:東北大学大学院生命科学研究科 助教 梅原厚志
掲載誌:The Journal of Organic Chemistry
DOI:10.1021/acs.joc.6c00278

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
助教 梅原厚志
TEL: 022-217-6214
Email: atsushi.umehara.e3*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

http://sasaki-umehara-lab.moon.bindcloud.jp/

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
高橋さやか
TEL: 022-217-6193
Email: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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