2026年 | プレスリリース・研究成果
放射光実験の大容量データの即時圧縮技術を開発 -SPring-8のデータを8,600分の1に圧縮-
【本学研究者情報】
〇大学院理学研究科物理学専 准教授 齋藤真器名
研究室ウェブサイト
【概要】
理化学研究所(理研)放射光科学研究センター制御情報・データ創出基盤グループの初井宇記グループディレクター、高輝度光科学研究センター研究DX推進室の西野玄記主幹研究員(理研放射光科学研究センター客員研究員)、城地保昌室長(理研放射光科学研究センタービームライン制御解析チームチームリーダー)、東北大学大学院理学研究科の齋藤真器名准教授(理研放射光科学研究センター客員研究員(研究当時))らの共同研究グループは、放射光実験におけるX線画像検出器から出力される大容量データを即時圧縮するデータ処理基盤を開発し、大型放射光施設「SPring-8」[1]において構築し、運用を始めました。
本研究で開発されたデータ処理基盤は、エクサバイト(EB、1EBは100京バイト、1テラバイト(TB、1TBは1兆バイト)の記憶装置にすると100万台分)級のデータ生成が見込まれる、「SPring-8-II[2]」などの次世代放射光施設を支える中核基盤技術です。また、本技術は、幅広い計測分野における大容量データ処理を支える技術としての展開も期待されます。
本研究で対象としたガンマ線準弾性散乱(QEGS)実験[3]では、84万画素のCITIUS検出器[4]を17.4キロヘルツ(kHz)で動作させます。このとき検出器からは毎秒27ギガバイト(GB、1GBは10億バイト)のデータが生成され、1週間では約19ペタバイト(PB、1PBは1,000兆バイト、1TBの記憶装置にすると1,000台分)に達します。
共同研究グループは、FPGAデータ処理基板上の書き換え可能な半導体回路、FPGA[5]により画素ごとの前処理をデータ生成後に直ちに実行し、さらに可逆圧縮(元データを損なわず正確に復元できるように圧縮すること)を組み合わせることで、平均約8,600分の1という高い圧縮率を達成しました。圧縮後のデータは施設内データセンターへ自動転送され、高性能計算機を用いた並列解析により、ユーザーは実験中に解析結果を確認し、測定条件を最適化できます。
本研究は、科学雑誌『Journal of Synchrotron Radiation』オンライン版(3月25日付)に掲載されました。
FPGAデータ処理基板を収めた計算機
【用語解説】
[1] 大型放射光施設「SPring-8」
理化学研究所が所有する兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す大型放射光施設で、利用者支援などは高輝度光科学研究センター(JASRI)が行っている。SPring-8(スプリングエイト)の名前はSuper Photon ring-8 GeVに由来する。SPring-8では、放射光を用いてナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われている。
[2] SPring-8-II
SPring-8の大幅な性能向上を目指した次期計画の名称。詳しくは、下記プレスリリースを参照。
2024年10月24日プレスリリース「SPring-8光源大改修の設計指針を公表」
[3] ガンマ線準弾性散乱(QEGS)実験
放射光を用いて、物質中の原子・分子の動きを100ピコ秒(1ピコ秒は1兆分の1秒)〜100ナノ秒(1ナノ秒は10億分の1秒)の時間領域で調べる測定手法。散乱されたX線のわずかなエネルギー変化を解析することで、材料や生体関連試料などの微視的な動的挙動を評価できる。詳しくは、下記プレスリリースを参照。
2024年6月18日プレスリリース「10億分の1秒の原子運動を見る放射光技術を開発」
[4] CITIUS検出器
理化学研究所が開発した、画素サイズ72.6マイクロメートル(µm、1µmは100万分の1メートル)、フレームレート(1秒間に撮像できる静止画の枚数)17.4kHzで動作するX線画像検出器。本研究で用いたシステムでは、3枚のセンサーを組み合わせて合計84万画素の検出器として運用されている。
[5] FPGA
製造後でも回路構成を変更できる集積回路。並列処理や入出力制御を柔軟に実装できるため、計測装置などでデータ処理や制御を組み込む用途に用いられる。FPGAはField Programmable Gate Arrayの略。
【論文情報】
<タイトル>FPGA-accelerated streaming data reduction achieving an average compression ratio over 8000 in a 17.4 kHz, 840 kpixel CITIUS detector for quasi-elastic gamma-ray scattering
<著者名>Haruki Nishino, Masashi Kobayashi, Toshiyuki Nishiyama Hiraki, Yoshiaki Honjo, Kyosuke Ozaki, Mitsuhiro Yamaga, Nobumoto Nagasawa, Yoshitaka Yoda, Yasumasa Joti, Makina Saito and Takaki Hatsui
<雑誌>Journal of Synchrotron Radiation
<DOI>10.1107/S1600577526000883
問い合わせ先
東北大学大学院理学研究科 広報・アウトリーチ支援室
Tel: 022-795-6708
Email: sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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