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リラクサー強誘電体の長年の謎を解明 ―ナノ極性領域の成長と相互作用を初めて直接観測―

【本学研究者情報】

〇多元物質科学研究所 助教 森川大輔
多元物質科学研究所 教授 津田健治
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • ナノメートル(nm、1nmは10億分の1メートル)サイズの極小領域(分極ナノ領域(PNR)(注1))が、温度低下とともに成長しネットワーク状に連結する様子を、世界で初めて電子顕微鏡で直接観察しました。
  • 化学的規則領域(COR)(注2)がサイズや配置が変化せず静的に存在することを明らかにし、材料の性能の起源を説明する「ランダム電場モデル(注3)」を実空間で直接実証しました。
  • 本成果は、電気自動車や再生可能エネルギー分野で求められる「より小さく、より大容量で、より効率的な」な次世代電子部品の開発を加速させ、高性能電子材料の設計指針として重要な基盤を提供します。

【概要】

スマートフォンやセンサーなど、私たちの生活に欠かせない電子機器には、「リラクサー強誘電体(注4)」と呼ばれる極めて高性能な材料が使われています。しかし、なぜこれほど高い性能を発揮するのか、その根本的な理由は数十年もの間、物理学の大きな謎でした。

東北大学、静岡大学、東京科学大学の研究グループは、最先端の4次元走査透過電子顕微鏡手法(4D-STEM)(注5)を用いて、代表的なリラクサー材料であるPMN(鉛マグネシウムニオブ酸)の内部をナノメートル単位で観察しました。その結果、温度が下がるにつれて「電気的な偏りを持つナノ領域」が成長し、ネットワークのように繋がっていく様子を世界で初めて直接捉えることに成功しました。これらの結果は、ランダム電場によって分極の発展が制御されるとする「ランダム電場モデル」を直接裏付けるものであり、リラクサー強誘電体の物理像に対する決定的な理解を与える成果です。

本研究成果は、Applied Physics Letters に4月6日付けで掲載されました。

図1. 材料内部のナノ領域の構造を示す概念図と、本研究で用いた最先端の電子顕微鏡の手法(4D-STEM)のイメージ。

【用語解説】

注1. 分極ナノ領域(PNR): 材料の内部に存在する、プラスとマイナスの電気が特定の方向に偏ったナノメートルサイズの微小な領域。

注2. 化学的規則領域(COR): 材料を構成する原子が特定の規則に従って並んでいるナノメートルサイズの領域。

注3. ランダム電場モデル: 材料内部の微小な化学的乱れが「不規則な局所電場(ランダム電場)」を生み出し、それが電気的な偏りを持つナノ領域(PNR)の成長や振る舞いをコントロールしているとする理論モデル。

注4. リラクサー強誘電体: 一般的な強誘電体よりも広い温度範囲で非常に高い誘電率(電気を蓄える能力)や圧電性を示す特殊な材料。

注5. 4次元走査透過電子顕微鏡手法(4D-STEM): 電子線を試料に当てて、透過してきた電子の回折パターンを二次元の画像データとして測定点ごとに記録する、最先端の電子顕微鏡技術。

【論文情報】

タイトル:Direct imaging of temperature evolution of polar nanoregions and chemically ordered regions in PMN relaxor: Evidence for polar phase percolation
著者:Kohei Hino, Daisuke Morikawa*, Desheng Fu, Mitsuru Itoh, and Kenji Tsuda
*責任著者:東北大学多元物質科学研究所 助教 森川大輔
掲載誌:Applied Physics Letters
DOI:10.1063/5.0297426

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学 多元物質科学研究所
助教 森川 大輔(モリカワ ダイスケ)
TEL: 022-214-5169
Email: daisuke.morikawa.e5*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学 多元物質科学研究所 広報情報室
TEL: 022-217-5198
Email: press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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