2026年 | プレスリリース・研究成果
34億年前の海洋に生物的硫黄代謝の痕跡 ――太古の浅瀬は生命にとっての"硫黄のオアシス"だった?――
【本学研究者情報】
〇大学院理学研究科地学専攻 教授 掛川武一
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 約34億年前の岩石の中に発見した直径0.01mmほどの珍しい多層構造の黄鉄鉱から地球史初期の生命活動の痕跡を見出しました。
- 当時の浅瀬ではこれまで考えられていた以上に硫酸の多い環境が局所的にあり、そこでは硫酸を利用する生態系がすでに成立していたことが分かりました。
- 地球史初期の生命がどのような環境でエネルギーを獲得し生きていたのかを理解する手掛かりとなるだけでなく、その方法論は「地球外生命探査」への応用も期待されます。
【概要】
東京大学大気海洋研究所の笹木晃平特任研究員および高畑直人助教、千葉大学大学院理学研究院の石田章純准教授、東北大学大学院理学研究科の掛川武教授、名古屋大学大学院環境学研究科の杉谷健一郎教授らからなる研究チームは、約34億年前の岩石から地球史初期の生命が硫酸イオン(SO42-)を使って呼吸していた痕跡を見出しました。本研究で調べたのは、岩石の中にある直径0.01mmより小さい同心円状の黄鉄鉱(FeS2)(注1)です。最新の分析装置であるナノスケール二次イオン質量分析計(NanoSIMS)(注2)を用いて、この小さな黄鉄鉱組織の内部における硫黄同位体比(δ34S)(注3)の変動を、世界で初めて高精度に分析することに成功しました。さらにその中の有機物(生物の材料となる炭素を含む物質)の分布や同位体比の特徴を調べると、この黄鉄鉱形成には硫酸で呼吸を行う微生物活動が関わったことが明らかになりました。大気に酸素がほとんど存在しなかった当時、海では一般に主要な栄養源である硫酸イオンも極めて乏しかったと考えられてきました。しかし本研究の分析結果は、太古代の浅瀬環境の一部では硫酸が比較的に多い場所があり、そこが初期生命にとっての「オアシス」になっていた可能性を示しています。本研究成果は、太古代の生命がどんな環境で生き、どんな仕組みでエネルギーを得ていたのかを理解する手掛かりになります。さらに、今後の地球の生命起源研究や古環境復元研究、地球外生命を探す研究にも役立つことが期待されます。
オーストラリア、約34億年前の堆積岩とその中に見つかる微小な同心円状の黄鉄鉱
【用語解説】
(注1)黄鉄鉱
鉄と硫黄からできた鉱物(FeS2)で、金色に見えることから「愚者の金」とも呼ばれる。微生物の硫黄代謝によって形成されることがあり、過去の生命活動や環境を知る手がかりとなる。
(注2)ナノスケール二次イオン質量分析計(NanoSIMS)
岩石や鉱物の表面でナノメートルスケールの領域から元素組成や同位体比を高感度・高空間分解能で分析可能な二次イオン質量分析装置。
(注3)硫黄同位体比(δ34S)
重さの違う硫黄同位体の割合(=34S/32S比)から標準物質の34S/32S比の差分を取り,それを標準物質の34S/32S比で割り算したものに1000を掛けたもの(=千分率,‰)。標準物質にはVienna-Canyon Diablo Troilite(VCDT)を使用している。微生物活動や化学反応の違いによって値が変化するため、硫黄がどのような過程で利用・生成されたかを知る手がかりとなる。
【論文情報】
雑誌名:Geochimica et Cosmochimica Acta
題 名:Microbial activity preserved in 3.4 Ga colloform pyrite: A micro-scale sulfur isotope analyses
著者名:Kohei Sasaki, Naoto Takahata, Akizumi Ishida, Takeshi Kakegawa, Kenichiro Sugitani
DOI: 10.1016/j.gca.2026.03.005
問い合わせ先
東北大学大学院理学研究科 広報・アウトリーチ支援室
E-mail:sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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