本文へ ナビゲーションへ
ここから本文です

頭頸部がん治療で「どの薬が効きやすいか」を予測する新指標を発見-一人ひとりにあった「精密医療」の実現へ-

【本学研究者情報】

〇東北大学病院腫瘍内科 講師 西條憲
ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 頭頸部がんにおいて、どの薬が効きやすいかを事前に予測できる新しいバイオマーカー(注1)を発見しました。
  • がん細胞内の炎症に関わるJAK-STAT経路(注2)の活性化指標となるp-STAT3(注3)の発現状態が、免疫療法と分子標的薬の効果の違いに関連することを明らかにしました。
  • 本研究成果は、患者ごとに最適な治療を選ぶ「精密医療」の実現につながる成果です。

【概要】

頭頸部がんの薬物療法では、免疫チェックポイント阻害薬(注4)と抗EGFR抗体薬(注5)という2つの治療選択肢があります。しかし、どの患者にどちらの薬がより効果的なのかを事前に判断する方法は確立されていません。

東北大学病院腫瘍内科の西條憲講師、川上尚人教授らの研究グループは、がん細胞の中で働く炎症のシグナルJAK-STAT経路に注目しました。頭頸部がん患者30名の臨床データを解析したところ、免疫チェックポイント阻害薬が効きにくい患者では、抗EGFR抗体薬が高い効果を示すことを確認しました。さらに、JAK-STAT経路に関わる遺伝子の発現、およびこの経路の活性を示す指標であるp-STAT3の発現が、2つの薬の効きやすさの違いに関連していることを明らかにしました。これらの知見は、腫瘍の分子特性に基づいて最適な治療法を選択する「精密医療」の観点から、頭頸部がんの治療戦略の個別化に貢献します。将来的には、患者ごとにより適切な治療薬を選択することで治療成績の向上につながることが期待されます。

本研究成果は、2026年4月23日に国際学術誌 JCO Precision Oncology に掲載されました。

図1. 研究の概略

【用語解説】

注1. バイオマーカー:腫瘍の性質や状態から薬剤を選択する指標です。

注2. JAK-STAT経路:細胞がサイトカインなどのシグナルを受け取った際に活性化されるシグナル伝達経路で、遺伝子発現を調節し、炎症反応、細胞の増殖・分化・免疫応答などに関与しています。

注3. p-STAT3(リン酸化STAT3):STAT3というタンパク質が活性化された状態を示す指標で、がん細胞内の炎症シグナルの強さを反映します。

注4. 免疫チェックポイント阻害薬:免疫細胞に備わる抑制機構(チェックポイント)を阻害することで、がん細胞に対するT細胞の攻撃能を回復・増強する薬剤です。がんが免疫から逃れる仕組みを解除する治療として用いられます。

注5. 抗EGFR抗体薬:上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に結合し、そのシグナル伝達を阻害する抗体医薬です。EGFRを介した細胞増殖や生存シグナルを抑制することで、腫瘍の進行を抑えます。

【論文情報】

タイトル:Inverse Relation Between Responses to Pembrolizumab Plus Chemotherapy and Subsequent Cetuximab Plus Paclitaxel in Head and Neck Cancer: Role of the Janus Kinase-Signal Transducer and Activator of Transcription Signaling Pathway
著者:西條憲、今井源、岩崎智行、石井亮、東賢二郎、大越明、山﨑有人、白川智章、齋藤椋、若山祥之介、沼倉龍之助、吉田裕也、谷口桜、笠原佑記、大内康太、小峰啓吾、城田英和、高橋雅信、鈴木貴、香取幸夫、石岡千加史、川上尚人* 
*責任著者:東北大学病院腫瘍内科 教授 川上 尚人(かわかみ ひさと)
掲載誌:JCO precision oncology
DOI: 10.1200/PO-25-01050

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学病院 
腫瘍内科
講師 西條 憲(さいじょう けん)
TEL: 022-717-8543
Email: ken.saijo.d6*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学病院広報室
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
TEL: 022-717-8032
Email: press.med*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

sdgs_logo

sdgs03

東北大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています