2026年 | プレスリリース・研究成果
核の中のDNAの詰まり具合は脂質が決める ~ヘテロクロマチンの新しい制御機構の提案~
【本学研究者情報】
〇薬学研究科生物構造化学分野 准教授 梶本真司
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 細胞核内のDNAが密に詰まった領域(ヘテロクロマチン)の硬さが脂質分子によって制御されていることを発見しました。
- 核内の脂質はヘテロクロマチンに選択的に集まり、DNAとタンパク質の相互作用を強めることで、クロマチン(注1)を凝縮する「分子のり」として働くことが示されました。
- 遺伝子発現の制御機構の理解を深めるとともに、クロマチン関連の疾患の理解や創薬への応用が期待されます。
【概要】
細胞の核内においてDNAはクロマチンと呼ばれる構造をとり、その中でもヘテロクロマチンはDNAが高濃度に凝縮した領域として知られています。しかし、この凝縮状態をどのような分子が制御しているかは解明されていません。
東北大学大学院薬学研究科の町田雅斗大学院生、梶本真司准教授、中林孝和教授らは、生きた細胞内の分子と硬さの分布を同時に測定できるイメージング法を開発しました。この手法を用いて、ヘテロクロマチンには脂質分子が集積しており、周囲より硬いことを定量的に示しました。さらに、脂質量が減少すると、柔らかくなることがわかりました。これらの結果から、脂質はヘテロクロマチンの凝縮状態を維持する「分子のり」として働いていると考えられます。
本研究は、細胞内の分子組成と硬さを同時に定量する新手法を提示するとともに、クロマチンの構造と機能を結びつける新たな分子機構を示しました。今後、細胞内のクロマチン異常やタンパク凝集に関連する疾患の理解、さらには新しい治療戦略への応用が期待されます。
本成果は2026年4月24日 (金) にアメリカ化学会の学術誌JACS Auに掲載されました。
図1. 有糸分裂中の細胞の生体分子濃度と硬さの空間分布。ラマン散乱から各生体分子の濃度分布を、ブリルアン散乱から硬さの分布を可視化している。分裂過程においてDNAを高濃度に含む、"硬い"染色体構造を形成し、その後2つの娘細胞へ分配される過程を定量的に可視化している。
【用語解説】
注1. クロマチン
細胞の核内においてDNAがタンパク質と結合して形成する構造体。約2mと非常に長いDNAがヒストンなどのタンパク質に巻き付くことで10µm程度の核内にコンパクトに収納されている。クロマチンはその状態に応じて、遺伝子が活発に働く領域(ユークロマチン)と、強く凝縮して働きが抑えられている領域(ヘテロクロマチン)に分けられる。
【論文情報】
タイトル:Lipids Contribute to Heterochromatin Condensation Revealed by Quantitative Raman-Brillouin Microscopy
著者: Masato Machida, Shinji Kajimoto*, Ren Shibuya, Mayu Isono, Mai Watabe, Yukako Oma, Kayo Hibino, Kentaro Fujii, Masaki Okumura, Masahiro Harata, Atsushi Shibata, Takakazu Nakabayashi*
*責任著者:東北大学大学院薬学研究科 准教授 梶本真司、教授 中林孝和
掲載誌:JACS Au
DOI: 10.1021/jacsau.6c00082
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院薬学研究科
准教授 梶本真司
TEL: 022-795-6858
Email: shinji.kajimoto.d1*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
教授 中林孝和
TEL: 022-795-6855
Email: takakazu.nakabayashi.e7*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院薬学研究科・薬学部
総務係
TEL: 022-795-6801
Email: ph-som*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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