2026年 | プレスリリース・研究成果
多剤耐性がんを克服する新たなナノ粒子薬物送達システムの開発に成功 ―アミノ酸由来のナノ粒子による逐次的薬物放出と光熱療法の融合―
【本学研究者情報】
〇多元物質科学研究所 教授 都英次郎
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- アミノ酸を原料とした超微小粒子(ナノ粒子(注1))を独自の製法で作製し、抗がん剤をより多く効率よく詰め込むことに成功しました。
- 粒子の表面加工により、がん細胞が抗がん剤を細胞の外へ追い出す前に、その「排出ポンプ」の働きをあらかじめ止めてから抗がん剤を届ける仕組みを実現しました。
- 薬による治療とレーザー光を使った熱治療を組み合わせることで、治療が難しい多剤耐性がんのマウス実験において、40日間すべてのマウスが生存するという顕著な効果を達成しました。
- 開発したナノ粒子は正常な組織への毒性がなく、がん細胞を狙い撃ちにする機能も確認されました。
【概要】
がん細胞が、複数の抗がん剤に対して同時に抵抗性を持つようになる現象「多剤耐性」は、がんに対する化学療法において大きな課題となっています。
東北大学 多元物質科学研究所の都英次郎教授(北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 客員教授)らの研究グループは、多剤耐性(注2)がんの治療に向けた革新的なナノ粒子薬物送達システムの開発に成功しました(図1)。本研究グループは、アミノ酸を原料とした超微小粒子(ナノ粒子)を独自の製法で作製し、その表面をイカやタコの墨に含まれる色素に似た物質(ポリドーパミン(注3))で層状にコーティングしました。この加工により、多剤耐性がん細胞が抗がん剤を排出する前に細胞内に蓄積させることが可能となりました。さらに、腫瘍部位を局所的に加熱する光熱療法との組み合わせにより、マウス実験で治療開始からわずか7日で腫瘍が完全に消失し、40日間すべてのマウスが副作用なく生存しました。
本成果は多剤耐性がんに対する化学療法と光熱療法を融合した新しい治療戦略として、高い臨床応用可能性を持ち、今後、様々な種類の多剤耐性腫瘍への応用拡大が期待されます。
本研究成果は、薬物送達分野の国際的権威ある学術誌「Journal of Controlled Release」に、2026年5月6日付けで掲載されました。
なお、本研究はフランス国立科学研究センター(CNRS)ストラスブール大学のAlberto Bianco博士、Cécilia Ménard-Moyon博士らの研究グループとの共同研究によるものです。
図1. 本研究の概念
【用語解説】
注1. ナノ粒子:直径が1〜1,000ナノメートル(1ナノメートル=10億分の1メートル)の超微小粒子。薬剤を内部に封入して腫瘍部位まで運ぶ「運び屋」として機能し、正常組織への副作用を低減しながら治療効果を高めることができる。
注2. 多剤耐性:がん細胞が複数の抗がん剤に対して同時に抵抗性を獲得する現象。化学療法を繰り返すうちに、がん細胞が薬剤を細胞外に排出する仕組みを発達させることで生じる。多くの患者で治療効果が低下する主要な原因の一つ。
注3. ポリドーパミン(PDA):タコやイカなどの軟体動物が分泌するメラニン色素に類似した生体適合性の高い高分子。近赤外線を吸収して熱に変換する性質(光熱変換能)を持ち、光熱療法への応用が期待されている。(PDA:Polydopamine)
【論文情報】
タイトル:Multifunctional amino acid-based nanoparticles for sequential drug delivery to overcome multidrug resistant cancer
著者:Tengfei Wang, Nina Sang, Cécilia Ménard-Moyon,* Eijiro Miyako,* Alberto Bianco*
*責任著者:東北大学多元物質科学研究所 教授 都英次郎
フランス国立科学研究センター(CNRS)ストラスブール大学 Alberto Bianco博士、Cécilia Ménard-Moyon博士
掲載誌:Journal of Controlled Release
DOI:10.1016/j.jconrel.2026.114954
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
教授 都 英次郎(みやこ えいじろう)
TEL: 022-217-6597
Email: eijiro.miyako.e2*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学 多元物質科学研究所 広報情報室
TEL: 022-21705198
Email: press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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