2026年 | プレスリリース・研究成果
PAI-1阻害薬「TM5614」の抗老化効果をヒトで確認-XPRIZE Healthspanセミファイナル臨床試験結果-
【本学研究者情報】
〇大学院医学系研究科 教授 宮田敏男
ウェブサイト
【発表のポイント】
- XPRIZE Healthspan(注1)のセミファイナル臨床試験において、PAI-1阻害薬「TM5614」(注2)を高齢者へ4ヶ月投与した結果、生物学的年齢(注3)が平均2〜3歳若返るなど、ヒトの遺伝子、遺伝子修飾(エピゲノム)、タンパク・細胞レベルで抗老化効果を確認しました。
- 免疫、代謝、骨・筋肉、認知・神経生理、凝固・線溶、抗酸化など、広範な改善が確認され、比較的健常な高齢者にも安全に投与可能であることが示されました。
- TM5614は「老化細胞を除去し、種々の加齢に伴う症状を改善できる新たな内服薬(Senolytic drug)候補」として健康寿命の延伸に寄与する可能性が示唆され、XPRIZE Healthspanファイナル試験への申請に向けた重要な臨床データが取得できました。
【概要】
これまでTM5614は多くのがん患者には投与されてきましたが、比較的健康な高齢者を対象とした臨床試験は初めてです。
東北大学、広島大学、東海大学、株式会社レナサイエンスらは、国際的な長寿コンペティション「XPRIZE Healthspan」のセミファイナル臨床試験(特定臨床研究)を実施しました。本試験では、加齢に伴い発症する疾患(高血圧症、2型糖尿病、慢性腎臓病、高脂血症)を有する50歳以上75歳以下の被験者20例を対象に、TM5614を4ヶ月間投与しました(臨床試験責任医師は張替秀郎東北大学理事・副学長)。その結果、生物学的年齢が平均して2〜3歳若返り、免疫や再生の機能が回復し、老化を促す物質が減少するなど、全身の抗老化を示唆する知見が確認されました。さらに、老化関連microRNA(注4)の減少、抗炎症や代謝改善に関わるタンパク質の変動、免疫細胞および造血幹細胞の機能回復、酸化ストレスマーカーの改善など、遺伝子、遺伝子修飾(エピゲノム)、タンパク、細胞レベルにわたる広範な改善が認められました。また、重大な副作用は確認されず、比較的健康な高齢者に対しても安全に投与可能であることが示されました。
本成果は、老化そのものに介入する内服薬の臨床応用の可能性を示すものであり、健康寿命の延伸に向けた新たな治療戦略として期待されます。今後は、2026年8月のファイナリスト選定を経て、日本、米国、サウジアラビア、台湾との国際共同による大規模臨床試験の実施を目指します。

【用語解説】
注1. XPRIZE Healthspan:健康寿命を延ばすことができた研究チームに対して、総額1億米ドルを支払うという世界的なコンペティション。XPRIZE財団が主催し、人間の老化や長寿に対する治療アプローチに革命を起こし、健康寿命を積極的に10年以上延伸するという挑戦的な課題に取り組むことを目的としています。
https://www.xprize.org/prizes/healthspan
注2. PAI-1(プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1)阻害薬「TM 5614」:PAI-1 は血栓形成に重要なタンパク。TM5614 は、東北大学大学院医学系研究科宮田敏男教授が開発したPAI-1を 阻害する内服薬(医薬品)であり、血栓溶解作用に加えて、がんや老化細胞を除去するための免疫系を亢進する作用を有します。
注3. 生物学的年齢:実年齢とは別に、遺伝子の修飾(DNAメチル化)などに基づいて推定される年齢です。
注4. microRNA:長さ約20塩基のRNAで、それぞれ特定のmRNAに結合して、分解を誘導したり、タンパク質への翻訳を抑制したりして、遺伝子発現を微調整する分子です。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科
分子病態治療学分野 教授
宮田 敏男(みやた としお)
TEL: 022-717-8157
Email: souyakulab*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
TEL: 022-717-8032
Email: press.med*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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