2026年 | プレスリリース・研究成果
痩せてもリセットされない皮膚の「肥満記憶」を世界で初めて解明―減量後も皮膚免疫細胞は肥満時の炎症リスクを保持―
【本学研究者情報】
〇大学院医学系研究科 講師 丹野寛大
ウェブサイト
【発表のポイント】
- 肥満によって変化した皮膚の免疫細胞は、減量して代謝状態が改善した後も元の状態には戻らず、「肥満記憶」として保持されることを明らかにしました。
- 減量後のマウスに乾癬(かんせん)(注1)を誘発させると、一見正常な皮膚であっても、肥満時と同等、あるいはそれ以上に症状が悪化することを確認しました。
- 脂肪組織で報告されている「肥満記憶(注2)」が皮膚組織にも存在することを世界で初めて明らかにし、過去の肥満歴を考慮した新たな治療・予防法やスキンケア支援の必要性を示しました。
【概要】
近年の研究で、脂肪組織において減量後も免疫細胞に「肥満記憶」が残り、全身性の慢性炎症状態を持続させることが報告されています。しかし、最大の免疫臓器である皮膚にも肥満記憶が残るかは不明でした。
東北大学大学院医学系研究科の鎌田若奈大学院生(研究当時)、丹野寛大講師、菅野恵美教授らの研究グループは、マウスモデルを用いた研究で、肥満によって引き起こされた皮膚免疫細胞の変化は、減量後も持続することを明らかにしました。すなわち、皮膚の免疫細胞も過去の肥満を「記憶」し、減量後もその影響を保持していることが示されました。減量後の皮膚は一見正常に見えますが、ひとたび炎症の引き金(刺激)が加わると、肥満と同様、あるいは上回る症状を示すことがわかりました。本成果は、肥満経験者の皮膚疾患リスクに新たな指針を与えるものです。
本研究成果は2026年5月15日付でJournal of Immunology Researchに掲載されました。
図1. 研究の概要 健康な皮膚(左:Lean)と比べ、肥満になった皮膚(中央:Obese)では、「炎症のスイッチ(CCL20、RORγt、IL-17A)」や真皮γδ T細胞が増加します。この増加は、減量後(右:WL)も、消えることなく皮膚に残り続けます。これが「肥満の記憶」であり、一度この記憶が刻まれると、次に刺激が加わったときに皮膚炎がひどく悪化してしまう原因となる可能性があります。
【用語解説】
注1. 乾癬:自己免疫疾患の一種、肥満により増悪する。
注2. 肥満記憶:減量により肥満が解消された後も、細胞が「肥満時の悪影響(炎症の記憶など)」を保持し続ける現象。主に脂肪組織で報告されている。
【論文情報】
タイトル:High Fat Diet-Induced Obesity Alters Cutaneous Immune Cell Function, and These Changes Persist after Weight Loss
著者:Wakana Kamada, Hiromasa Tanno*, Rena Takayashiki, Yuki Sato, Shinyo Ishi, Miki Shoji, Ko Sato, Tetsuji Aoyagi, Emi Kanno
*責任著者:東北大学大学院医学系研究科 看護技術開発学分野 講師 丹野寛大(たんの ひろまさ)
掲載誌:Journal of Immunology Research
DOI:10.1155/jimr/3930910
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科
看護技術開発学分野
講師 丹野 寛大(たんの ひろまさ)
TEL: 022-717-7958
Email: hiromasa.tanno.d3*tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
TEL: 022-717-8032
Email: press.med*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

![]()
東北大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています