2026年 | プレスリリース・研究成果
ゼオライト結晶化の「最初の一歩」を可視化 原子の「ねじれ」の秩序化が結晶化に先行する新原理を発見-触媒・分離材料の開発を、経験則から予測設計へー
【本学研究者情報】
〇国際放射光イノベーション・スマート研究センター/多元物質科学研究所 助教 二宮翔
〇国際放射光イノベーション・スマート研究センター/多元物質科学研究所 教授 西堀麻衣子
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- ゼオライト(注1)が結晶になる前に、シリケート(注2)骨格の三次元的な「ねじれ」が先に整い始めることを、X線発光分光(注3)によって直接捉えました。
- 従来のX線回折(注4)などでは見えにくかった、結晶化前の局所的な三次元構造変化を可視化する新しい方法を示しました。
- 本成果は、ゼオライトをはじめとする多孔質材料やネットワーク材料の合成を、経験と試行錯誤に頼る方法から、構造形成の途中過程を見ながら最適化する材料設計へと進める基盤になると期待されます。
【概要】
ゼオライトは、石油化学触媒、環境浄化、分離膜などに広く用いられる重要な多孔質材料です。しかし、ゼオライトがどのようにして無秩序な前駆体から秩序だった結晶へと変化するのか、その初期過程はこれまで十分に見えていませんでした。特に、原子のつながり方を決める三次元的な幾何学情報は、従来法では捉えにくく、結晶化の最初の段階はブラックボックスのままでした。
東北大学 国際放射光イノベーション・スマート研究センターの二宮翔助教、西堀麻衣子教授らの研究グループは、酸素 1s X線発光分光(O 1s XES)を用いて、MWW型ゼオライトの結晶化過程を詳細に追跡しました。その結果、結晶が現れる前の段階で、シリケート骨格の O-Si-O-Si のねじれ角(注5)が無秩序な状態から段階的に整い始めることを見いだしました。さらにこの秩序化は、X線回折で長距離秩序が現れるより前に起こり、また鉄(Fe)の本格的な骨格導入よりも先に進行することが分かりました。
本研究は、ゼオライト結晶化において、結晶がいきなり形成されるのではなく、まず三次元ネットワークの"形の準備"が起こることを示したものです。研究グループはこの知見をもとに、「トポロジー・ファースト(topology-first)」(注6)とも言える新しい結晶化像を提案しました。
図1 X線発光分光で捉えた結晶化前の原子ネットワーク変化 ゼオライトが結晶になる前に、原子ネットワークの「ねじれ」が先に整い始めることを、X線発光分光によって捉えた。実験スペクトルと理論計算の比較から、結晶化初期にはシリケート骨格の三次元的な配列が変化していることがわかった。
【用語解説】
注1. ゼオライト:内部に微細な孔を持つ結晶性多孔質材料。触媒、吸着材、分離膜などに広く利用される。
注2. シリケート:ケイ素(Si)と酸素(O)からなる化合物の総称。ゼオライトの骨格を形成する基本的な単位。
注3. X線発光分光:物質にX線を照射した際に放出されるX線を測定し、原子周辺の電子状態や局所構造を調べる手法。(XES:X-ray Emission Spectroscopy)
注4. X線回折:結晶にX線を照射し、跳ね返ってきた光(回折)のパターンから結晶の構造(原子の規則配列)を調べる手法。
注5. ねじれ角:原子が連なった構造の三次元的な向きやねじれ具合を表す幾何学パラメータ。本研究では O-Si-O-Si のねじれ角が重要な指標となった。(torsion angle)
注6. トポロジー・ファースト(Topology First):結晶としての周期的な規則性(長距離秩序)が現れるよりも前に、まず原子同士のつながり方やねじれ(局所的なトポロジー)が秩序化する、本研究で提唱された新しい結晶化の基本原理。
【論文情報】
タイトル: Torsional ordering as a prerequisite for zeolite crystallization revealed by X-ray emission spectroscopy
著者: Kakeru Ninomiya†, Ralph Ugalino, Koki Itamoto, Zhong Yin, Hisao Kiuchi, Yoshihisa Harada, Hideyuki Magara, Kenji Tsuda, Masami Terauchi, Toshiyuki Yokoi, Maiko Nishibori*
掲載誌: Journal of the American Chemical Society
†筆頭著者: 東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター 助教 二宮 翔
*責任著者: 東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター 教授 西堀 麻衣子
DOI: 10.1021/jacs.6c03877
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学 国際放射光イノベーション・スマート研究センター
(兼)多元物質科学研究所
教授 西堀 麻衣子(にしぼり まいこ)
TEL: 022-752-2346
Email: maiko.nishibori.d8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
TEL: 022-217-5198
Email: press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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