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分子を識別し、色・大きさ・硬さが変わる多孔性ゲル 〜金属錯体多面体が分子認識と材料応答をつなぐ〜

【本学研究者情報】

〇学際科学フロンティア研究所新領域創成研究部 助教 立石友紀
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • ⾦属錯体多⾯体1)MOP)分⼦が高分子と連結した多孔性ゲルの合成に成功
  • ゲスト分子2)を構成する原子の種類を認識し、ゲルネットワークへの取り込みを制御
  • ゲスト分子の取り込みにより、ゲルの色・大きさ・硬さが変わる

【概要】

京都⼤学アイセムス(⾼等研究院 物質ー細胞統合システム拠点:WPI-iCeMS)の立石友紀 日本学術振興会特別研究員PD(当時、現・東北大学学際科学フロンティア研究所助教)と古川修平 教授らの研究グループは、特定の分子を見分け、「どの分子を取り込んだか」という分子レベルの識別情報を、「色」、「大きさ」、「硬さ」の変化として出力する多孔性ゲル「MOPEGゲル」の開発に成功しました。

分子を識別する仕組みはガスの分離から水質管理、薬剤分子の輸送など、私たちの生活・社会に密接に関連しており、これまでにもさまざまな分子認識材料の開発が進められてきました。似通った構造の分子を精密に識別する分子認識はナノメートルの非常に小さいスケールで起こる現象です。この現象を人間が簡単に肉眼で識別できる「色や大きさ」、触って確認できる「硬さ」などで判別できると、新しいセンサーなどへの応用が期待できます。

本研究では、この分子認識情報を目に見える形で出力する新しい材料「MOPEGゲル」を開発しました。MOPEGゲルは、金属錯体多面体(MOP)という分子を「結び目(架橋点)」とし、柔軟なポリエチレングリコール(PEG)と連結させて作るゲル材料です。MOPの表面にある金属イオンが配位結合3))を介した分子認識サイトとしてはたらきます。配位結合を形成できる窒素(N)原子をもつ分子をMOPEGゲルの中へ取り込ませた場合にのみ、ゲルは緑色から赤色へ変化し、大きさも収縮するとともに硬さ(貯蔵弾性率)が10倍以上跳ね上がりました。一方、構造が類似していても識別できない炭素(C)原子や水素(H)原子のみをもつ分子では、これらの顕著な変化は起こりません。これにより、MOPEGゲルは、ナノサイズの分子情報を、人間が感知可能なゲル材料の色や大きさ、硬さといったマクロな物性へと変換できることを実証しました。

本研究で示された材料設計指針は、MOPに限らず既存の他の機能性分子を架橋点とした高分子材料の開発へと展開できます。今後、「ミクロ分子認識」と「マクロ物性応答」の両輪がはたらく新しい種類の多孔性材料として、特定の化学物質に反応して応答する人工アクチュエータや、スマート薬剤輸送システムなどの実現に新たな道が開かれることが期待されます。

本成果は2026年5⽉5⽇(⽇本時間)に、⽶国誌「Journal of the American Chemical Society」オンライン版で公開されました。

1. MOPEGゲルの合成。MOP分子をヒモ状の高分子であるPEGと反応させることでMOPEGゲルが形成する。

【用語解説】

※1 金属有機多面体(MOP):金属イオンと有機配位子から組み上がるナノサイズの多面体型の分子です。本研究では、「分子認識サイト」と「架橋点」としての役割を担うことができる化学的安定性の高い分子を用いました。

※2 ゲスト分子:分子認識において、ホスト(認識する側)に取り込まれ、識別される対象となる分子のことです。本稿では、わさびの辛味成分(アリルイソチオシアネート)やビタミンB3の類似分子(ニセリトロール)などをゲスト分子の例として紹介しています。

※3 配位結合:金属イオンと、電子豊富な原子(窒素(N)など)を含む特定の分子の間で形成される化学結合のことです。一般的に静電気のような弱い力に比べて結合が強く、後述する共有結合よりは弱い特性があります。

【論文情報】

"Coordinative Guest Recognition Triggers Macroscale Deformation of Covalently Linked Metal-Organic Polyhedra Polymer Gels"
(参考訳:配位結合によるゲスト分子認識が引き起こす、共有結合で架橋された金属有機多面体ポリマーゲルの巨視的変形)
著者:Tomoki Tateishi, Shunsuke Imai, Ayana Miyata, Yuki Tokudome, Kenji Urayama, Shuhei Furukawa Journal of the American Chemical Society (American Chemical Society)|
DOI: 10.1021/jacs.6c06620

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究内容について)
東北大学学際科学フロンティア研究所 助教
立石 友紀(タテイシ・トモキ)
電話:022-795-6547
Eメール:tomoki.tateishi.d1*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(学際科学フロンティア研究所について)
東北大学 学際科学フロンティア研究所 企画部 特任准教授
波田野 悠夏(ハタノ・ユカ)
Eメール:fris-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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