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硫黄の結合状態を3次元で可視化 ―ミクロな材料内部の化学状態をナノスケールで観察―

【本学研究者情報】

〇国際放射光イノベーション・スマート研究センター 教授 高橋幸生
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 硫黄の結合状態を3次元で可視化することに成功しました。
  • マイクロメートル厚試料でもナノスケール観察を実現しました。
  • 電池材料や高分子材料への応用が期待されます。

【概要】

材料観察において、硫黄のような軽元素について、結合状態(硫黄-硫黄結合や硫黄-炭素結合)とその空間分布を三次元的に評価する手法は限られていました。

東北大学 大学院工学研究科の佐々木雄平大学院生、東北大学 国際放射光イノベーション・スマート研究センターの石黒志准教授、高橋幸生教授、住友ゴム工業株式会社の金子房恵博士(東北大学 国際放射光イノベーション・スマート研究センター 特任准教授)らの研究グループは、3GeV高輝度放射光施設NanoTerasu(注1)のビームラインBL10Uを用い、硫黄K吸収端(注2)におけるX線タイコグラフィCTにより、約80ナノメートル(nm、1 nmは10億分の1 m)の分解能で、マイクロメートル(μm、1 μmは100万分の1 m)厚の高分子材料内部における硫黄の化学状態を三次元で可視化することに成功しました。

本研究では、4つの異なるX線エネルギーで高分解能X線タイコグラフィ(注3)測定を行うことで、電子密度および硫黄濃度に加え、硫黄-硫黄結合および硫黄-炭素結合に対応する指標を三次元的に再構成しました。その結果、試料内部において、球状領域では硫黄-硫黄結合が多く、非球状領域では炭素や酸素成分および硫黄-炭素結合が相対的に多いという、化学状態の空間的不均一性を明らかにしました。

本手法は、軽元素材料における構造と化学状態を解析する新しい手法として、電池材料や高分子材料などの機能発現メカニズムの解明に貢献することが期待されます。本研究成果は、2026年5月16日付で科学誌Scientific Reportsに掲載されました。

図1. 硫黄K吸収端近傍におけるX線タイコグラフィCT測定の模式図

【用語解説】

注1. NanoTerasu:
宮城県仙台市 東北大学青葉山新キャンパス内にて整備が進められ、2024年4月に稼働を開始した中型放射光施設。国の主体機関である国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST)と一般財団法人光科学イノベーションセンター(PhoSIC)を代表機関とする宮城県、仙台市、国立大学法人東北大学、一般社団法人東北経済連合会からなる地域パートナーで構成され、費用負担も含めた役割分担の元で整備が進められている。

注2. 硫黄K吸収端:
X線のエネルギーを変化させたときに、硫黄原子が特定のエネルギーでX線を強く吸収する現象を指す。このエネルギー付近では、硫黄の電子状態や化学結合の違いによって吸収のされ方が変化するため、硫黄の化学状態を調べることができる。

注3. X線タイコグラフィ:
コヒーレントX線回折イメージングの手法のうちの一つ。試料にコヒーレントX線を照射する際、試料面上でX線照射領域が一部重複するように試料を二次元走査し、各走査点において回折強度パターンを取得する。得られた複数の回折強度パターンに対して位相回復計算を実行することで、一枚の試料像を取得する。

【論文情報】

タイトル:Three-dimensional imaging of sulfur chemical states in polymers with micrometer thickness using sulfur K-edge ptychographic tomography
著者:Yuhei Sasaki*, Nozomu Ishiguro, Masaki Abe, Shuntaro Takazawa, Naru Okawa, Mihiro Ikenaga, Fusae Kaneko and Yukio Takahashi*
*責任著者:東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター 
大学院生 佐々木雄平、教授 高橋幸生
掲載誌:Scientific Reports
DOI:10.1038/s41598-026-52630-4

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター
教授 高橋 幸生(たかはし ゆきお)
TEL: 022-217-5166
Email: ytakahashi*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
TEL: 022-217-5198
Email: press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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