2026年 | プレスリリース・研究成果
クライオ電子顕微鏡法を有機溶媒系へ適用拡大 〜メタノールおよび分散ナノ材料の元素分布を初めて可視化〜
【本学研究者情報】
〇多元物質科学研究所 技術職員 海原大輔
研究室ウェブサイト
〇多元物質科学研究所 教授 米倉功治、准教授 濵口祐
研究室ウェブサイト
〇多元物質科学研究所 准教授 佐藤庸平
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 従来は水系に限られていたクライオ電子顕微鏡法(注1)の適用範囲を有機溶媒系へと拡大しました。
- メタノールを用いて、再現性の高い凍結グリッド作製法(注2、3)を開発しました。
- 独自の元素マッピング法(注4)を適用し、凍結メタノール中の炭素や酸素、および分散ナノ粒子由来のケイ素の検出・可視化に成功しました。
- 有機溶媒系における材料・物質研究のための新たな分析・評価手法を提供します。
【概要】
クライオ電子顕微鏡法は、生物試料の研究に広く用いられていますが、近年では水系の非生物試料にも適用が広がりつつあります。一方、有機溶媒系では、凍結グリッドを再現よく作製することが困難であることに加え、電子線照射に対する耐性が低い傾向にあるため、その適用は限定的でした。
東北大学多元物質科学研究所の海原大輔技術職員(同大学事業支援機構 総合技術部 分析・評価・観測群)、佐藤庸平准教授、濵口祐准教授、米倉功治教授(理化学研究所放射光科学研究センター グループディレクター、最先端研究プラットフォーム連携(TRIP)事業本部 副プロジェクトディレクター兼任)らの共同研究グループは、最も単純な極性有機溶媒であるメタノールを用いて、再現性の高い凍結グリッド作製法を新たに開発しました。さらに、同グループが開発した元素マッピング法を適用し、メタノール溶媒やメタノール中に分散したナノ粒子由来の元素の検出・可視化に成功しました。本成果は、有機溶媒系における材料・物質研究への新たな分析・評価手法を提供するものです。
本成果は、顕微鏡科学分野の専門誌Oxford University Press Microscopyオンライン版に、2026年5月29日付で掲載されました。
図1. メタノール凍結グリッドの作製。
(a)従来法では、グリッド全面をろ紙に接触させ、余分な溶液を除去する。しかし、メタノールは揮発速度が速いため、グリッド全体が乾燥するか、膜が厚くなり過ぎて、クライオ電子顕微鏡観察に適した凍結薄膜を再現よく得ることは困難であった。
(b)本研究で用いた「グラジエント・ブロッティング法」。グリッドの約半分のみをろ紙に接触させることで、グリッド上で試料溶液の厚さの勾配が形成される。その結果、厚い領域と薄い領域の中間に、クライオ電子顕微鏡観察に適した厚みの凍結薄膜を再現よく形成できる。
【用語解説】
注1. クライオ電子顕微鏡法:急速凍結した試料を液体窒素温度付近の極低温下で観察することで、電子線による試料損傷を抑えつつ、試料本来に近い状態で観察することのできる電子顕微鏡法。
注2. グリッド:直径3 mmの金属メッシュからなり、その上に直径約1 μm(用途に応じて様々なサイズがある)の孔が多数空いた炭素支持膜が張られている。孔内に試料溶液が保持され、凍結薄膜が形成される。
注3. 凍結グリッド作製法:試料溶液を塗布したグリッドにろ紙を接触させ、余分な液体を除去することで薄膜を形成する。その後、急速に液体エタンなどの寒剤中にグリッドを浸漬し、試料薄膜の凍結を行う。通常は、ろ紙を当てる時間や強さを調整することで膜厚を制御する。
注4. 独自の元素マッピング法:本研究グループは、2025年、電子エネルギー損失分光(EELS)法を基盤とし、正確なバックグラウンド補正およびドリフト(観察対象のわずかな動き)補正技術を組み合わせ、凍結水溶液試料中のナノ材料の元素分布を可視化する手法を報告した。(2025年8月1日付東北大学プレスリリース「凍結溶媒内のナノ材料の元素分布を直接可視化できる技術を開発 〜生命科学から材料科学に至る広範な物質研究への寄与に期待〜」
【論文情報】
タイトル:Cryo-EELS elemental mapping of organic-solvent systems
著者:海原大輔*、佐藤庸平、濵口祐*、米倉功治*
*責任著者:東北大学多元物質科学研究所 教授 米倉功治、准教授 濵口祐、技術職員 海原大輔
掲載誌:Microscopy
DOI: 10.1093/jmicro/dfag027
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
教授 米倉 功治(よねくら こうじ)
TEL: 022-217-5380
Email: koji.yonekura.a5*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
東北大学多元物質科学研究所
准教授 濵口 祐(はまぐち たすく)
TEL: 022-217-5381
Email: tasuku.hamaguchi.c3*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
東北大学多元物質科学研究所
技術職員 海原 大輔(うなばら だいすけ)
TEL: 022-217-5381
Email: daisuke.unabara.c1*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
TEL: 022-217-5198
Email: press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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