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浸透圧・粘度・リンパ節サイズから最適なリンパ行性薬物送達法(LDDS)を予測 ―AI×数理モデルで治療戦略に沿ったリンパ節治療をー

【本学研究者情報】

〇医工学研究科 教授 小玉哲也
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • リンパ節(注1)へのがん転移に対する治療で直接薬剤を投与するリンパ行性薬物送達法(LDDS)において、これまで経験に頼るしかなかった溶媒の物理化学的特性、すなわち薬剤の浸透圧(注2)・粘度(注3)条件などを最適化するための解析基盤を構築しました。
  • 本解析基盤により、ヒトの初期リンパ流動態も説明できる可能性が示唆されました。
  • 本研究成果により、患者ごとのリンパ節特性や治療目的に応じた個別化LDDS治療設計が可能になることが期待されます。

【概要】

抗がん剤をセンチネルリンパ節(4)に直接投与し、下流のリンパ節へと送達するリンパ行性薬物送達法(lymphatic drug delivery system:LDDS)では、使用する溶媒の物理化学的特性、すなわち浸透圧と粘度の最適化が不可欠です。

しかしながら、薬剤の浸透圧や粘度、リンパ節サイズなど複数の因子が複雑に関与するため、これまでは経験則に基づく製剤設計が中心でした。

東北大学大学院医工学研究科の小玉哲也教授、宮崎黎飛大学院生、同大学院歯学研究科のAriunbuyan Sukhbaatar助教、岩手医科大学の片桐克典准教授らの研究グループは、リンパ節内に投与した薬剤の時間変化を数理モデル(注5)として確立し、AIと統合した解析基盤を構築しました。これにより、浸透圧・粘度・リンパ節サイズの組み合わせから、薬剤のリンパ節での貯留性と下流リンパ節への送達効率を予測できるようになりました。さらに、ヒト臨床データと実験動物を用いた本モデルを比較した結果、本基盤がヒトにおけるリンパの流れの説明にも応用できる可能性を見出しました。

本研究成果は、AIと数理モデルを融合するLDDSの新たな個別化医療の設計基盤となります。

本成果は、2026年5月12日付で国際学術雑誌Journal of Controlled Release(電子版)に掲載されました。

図1.LDDSの4パターン分類とリンパ節サイズに応じた薬剤貯留・送達予測マップ
(A)浸透圧と粘度を調整することで予測できるLDDSの4パターンの薬剤貯留・分布を表しています。クラスⅠでは、投与(上流)リンパ節に最大限貯留し、下流リンパ節への送達が効率的です。クラスⅡでは、投与リンパ節の貯留は最大化されますが、下流リンパ節への送達は効率的ではありません。クラスⅢでは、投与リンパ節の貯留は最大化されておらず、血管への流出がありえますが、下流リンパ節への送達は効率的です。クラスⅣでは、投与リンパ節の貯留・下流リンパ節への送達どちらも不十分である場合です。(B)リンパ節サイズに応じた各クラスを達成するための浸透圧と粘度を予測したマップを表しています。本マップを出力するために用いられたAI基盤はこれまでの結果を高精度に学習・予測できていました。リンパ節の大きさによって、目標とするクラスに必要な浸透圧と粘度が異なることが分かります。

【用語解説】

注1.リンパ節:
リンパ管の途中に存在する、豆のような形をした免疫器官。全身に数百個存在し、リンパ液に含まれる細菌、ウイルス、がん細胞などをろ過し、免疫反応を惹起する「フィルター」の役割を果たす。

注2.浸透圧:
水分を引き寄せる力。この力が液体の駆動力となってリンパ節内の貯留や送達の一助を担う。

注3.粘度:
液体が流れる際の抵抗(ねばり気)。この力が流体の抵抗となってリンパ節内の貯留や送達の一助を担う。

注4.センチネルリンパ節:
がん細胞がリンパ液の流れに乗って最初に到達するリンパ節であり、がんが最初に転移するリンパ節。

注5.数理モデル:
複雑な生体現象や薬物動態を数式や方程式を用いて簡略化・抽象化して表現した模型。本研究では、異なるリンパ節に投与した様々な浸透圧や粘度、の薬物動態プロファイルを一般化する数式を確立した。

【論文情報】

タイトル:Model-guided Design of Lymphatic Drug Delivery Systems Using Osmotic Pressure, Viscosity and Lymph Node Size
著者: Reito Miyazaki, Ariunbuyan Sukhbaatar, Shiro Mori, Takahiro Kusaka, Katsunori Katagiri, Kiyoto Shiga, Tetsuya Kodama*
*責任著者:東北大学大学院医工学研究科 教授 小玉哲也
掲載誌:The Journal of Controlled Release
DOI:10.1016/j.jconrel.2026.115010

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医工学研究科
腫瘍医工学分野
教授 小玉哲也(こだま てつや)
TEL: 022-717-7583
Email: kodama*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医工学研究科
総務係
Email: bme-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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