2026年 | ニュース
「科学は、みんなのもの」― 東北大学の研究を身近に
東北大学には、社会に役立つ研究に取り組む研究者が世界中から集まっています。たくさんの研究者が、この大学で生まれる科学を地域の人々の手元に届け、実際に体験してもらうアウトリーチ活動にも取り組んでいます。この春に行われた3つの取り組みを紹介します。
命を救う医療を支える科学
東北大学病院は5月31日、創立110周年を記念して「東北大学病院博」を開きました。会場の青葉山公園 仙臺緑彩館では、病院の白く無機質なイメージを一新するような、楽しく生き生きとしたブースが並びました。さまざまな医療技術を、家族で一緒に体験しながら学べるブースです。
亀井尚病院長は「形式ばった勉強ではなく、楽しい体験を通じて学んでほしい。医師や看護師が裏で何をしているのかを見る機会は多くありません。その舞台裏を少しのぞいてもらいたいと考えました」と話しました。
看護師体験のブースでは子どもたちが看護師の訓練と同じ器具を使って採血を体験しました。担当した看護師は、「病院や採血を怖がる気持ちが少しでも和らげばと思います。速やかで安全で痛くない、安心できる採血のしかたを、看護師になったつもりで学んでもらいます」と話しました。参加した小学生は「普段の生活では経験できないことをたくさん学べました。針で血を採るのは難しかったけれど、できたときはうれしかったです」と笑顔を見せました。
目の健康に取り組むプロジェクト「Vision to Connect」からはゲーム風シミュレーションが紹介され、担当スタッフは「スマートフォンを見続けると視力にどう影響するかなど、身近な例で学べるようにしました。視力は一度失うと取り戻すのが難しいので、子どものうちに良い習慣を身につけてほしい」と語りました。このゲームは2025年大阪・関西万博でも世界各国から訪れた子どもたちを魅了しました。
病院博当日の来場者は600人を超え、うち350人が体験に参加。研究者や医師、看護師、臨床検査技師、医学生などが見守る中、最先端の医療技術に触れました。
亀井病院長は「医療や健康に関心を持ち、将来この分野を志すきっかけになればと考えています。大学病院には、高度な医療を提供するだけでなく、医療への理解を社会に広める責任もあり、今回はその一つの形でした」と、期待と共に使命について語りました。
街と建物をつくる科学
仙台市役所の建設現場のすぐそばに、ある日突然、目立つピンクの扉が現れました。扉をくぐると、そこは 3月27日にオープンした「こども現場プロジェクト」の空間。毎週末開かれており、通りがかった子どもたちが立ち寄って、自分たちの街がどう造られているかを舞台裏から覗くことができます。普段は立ち入れない建設現場の様子を、間近で安全に学べる貴重な機会です。
中心メンバーの一人である西脇智哉准教授は「街をかたちづくる建物は重要なのに、どう造られているかを説明できる人は多くありません。子どもが傍観者ではなく、能動的な参加者として街づくりを学べる展示にしました」と話しました。空間には、建設や建築の科学、新しい市役所の舞台裏の情報などが詰め込まれ、秘密基地のような雰囲気です。
西脇准教授は「まず参加して、自分で試してもらうのが一番です。大人が答えを教えるのではなく、自分で見て、触れて、発見する。それは将来に生きる力になります」と話しました。
こども現場プロジェクトは、東北大学大学院工学研究科 都市・建築学専攻の西脇智哉准教授らが主催し、大林組JVの特別協力、仙台市財政局理財部本庁舎整備室の協力のもとで実施されています。
海を守る科学
変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC)は昨年7月、「学校訪問プログラム」を始めました。国内の中学校・高校が応募すると、WPI-AIMEC の研究者とマッチングされ、海洋科学をテーマにした講義やワークショップを受けられます。
中心となって取り組む Nadine Dion さんは、「海洋科学や研究の仕事に前向きなイメージを持ってもらいたい。研究者がロールモデルになり、『自分にもできるかも』と感じてもらえればいいなと思います。化学や美術など別の分野から入った研究者もいて、AIMEC の多様さや国際的な機会の豊かさを見せることで、科学者という生き方の新しい魅力を伝えられると思います」と話しました。
研究員の Batdulam Battulga さんは、マイクロプラスチックをテーマにしたワークショップを考案しました。生徒は日本各地の海岸で採れた砂から、マイクロプラスチックを取り出して分析します。身近な海岸に実際にどれほど多くのプラスチックごみがあるかを目の当たりにし、自分の生活に関わる問題について仮説を立て、科学者がやるように確かめます。Battulga さんは「気候変動や汚染、生態系の破壊といった課題に立ち向かうのは、若い世代だからこそ意味があります」と語りました。
今後はプランクトンのワークショップも予定しています。矢吹彬憲教授が東京湾の水を持ち込み、生徒が顕微鏡でのぞき、見えたプランクトンをスケッチして正体を考えます。Nadine さんは「新種が見つかる可能性だってないとは言えませんよ」と期待を込めました。
関連リンク
問い合わせ先
◯東北大学病院博について
東北大学病院 広報室
Email:pr.hosp*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
◯こども現場プロジェクトについて
大学院工学研究科 都市・建築学専攻 西脇 智哉
Email:tomoya.nishiwaki.e8*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
◯学校訪問プログラムについて
変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC)Nadine Dion
Email:dion.nadine*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)