2026年 | プレスリリース・研究成果
磁石の中の熱ゆらぎを「しぼる」ことに成功:マグノンの熱スクイージングを単一モード・二モードで初めて実証 ―量子センシングや次世代熱機関への応用に期待―
【本学研究者情報】
〇材料科学高等研究所 主任研究者 齊藤英治
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 磁性体中の集団励起(マグノン)の"熱ゆらぎ"を、位相空間で一方向だけ押し縮める「熱スクイージング」を観測しました。
- 単一モード熱スクイージングに加え、薄膜の上下表面に偏って存在する二つのマグノンモード間に相関が生じる二モード熱スクイージングも実証し室温付近でも持続することを示しました。
- 磁気デバイスにおける究極的な低ノイズ化や、将来の量子情報技術、高効率な情報熱機関の実現に向けた新たな基盤技術となることが期待されます。
【概要】
東京大学大学院工学系研究科の日置 友智 助教、齊藤 英治 教授(兼:理化学研究所創発物性科学研究センター チームディレクター、東北大学材料科学高等研究所 主任研究者)、東北大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR)のMehrdad Elyasi准教授、Gerrit Ernst-Wilhelm Bauer主任研究者らの研究グループは、磁性体中のスピンの集団運動である「マグノン」において、熱ゆらぎを特定の方向に圧縮する「熱スクイーズ状態(Thermally squeezed state)」を観測することに成功しました。
物理学において、系のノイズを特定の位相で減少させる「スクイーズ(絞り込み)」は、精密計測や量子情報処理の鍵となる概念です。これまで光や音の波(フォノン)では研究が進んでいましたが、磁性体における実現は困難とされてきました。
本研究では、マイクロ波によるパラメトリック励起(注1)を用いることで、マグノンの熱ゆらぎを特定の位相で熱励起レベル以下に抑制できることを証明しました。さらに、薄膜の上面と下面に分かれて存在するマグノン間に相関が生じる「二モード熱スクイーズ」の観測にも成功しました。この成果は、磁性体を用いた低ノイズなセンシング技術や、非平衡に特有なスクイーズ強度を自由度として用いることで、平衡熱力学の限界を超える熱機関の創出に道を開くものです。
本研究成果は、2026年6月1日(英国夏時間)に「Nature Physics」に掲載されました。
磁性体中の「熱スクイージング」
【用語解説】
(注1)パラメトリック励起:
磁化歳差運動の周波数の二倍の周波数を持つ交流磁場を加えることで磁化歳差運動周波数のダイナミクスを駆動する現象。一定の強度(閾値)以上の交流磁場を加えると、磁化歳差運動が生じ、閾値未満ではスクイージングが生じる。
【論文情報】
雑誌名:Nature Physics
題 名:Single- and two-mode thermal magnon squeezing
著者名:Tomosato Hioki*, Kaito Tojo*, Mehrdad Elyasi, Sohei Horibe, Hiroki Shimizu, Koujiro Hoshi, Takahiko Makiuchi, Gerrit E. W. Bauer and Eiji Saitoh (*Equal contribution)
DOI:10.1038/s41567-026-03294-4
問い合わせ先
東北大学 材料科学高等研究所(WPI-AIMR) 広報戦略室
Tel:022-217-6146
E-mail:aimr-outreach*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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