2026年 | プレスリリース・研究成果
アセチレンから300℃での低温グラフェン形成を実現 ―未利用・余剰炭化水素ガスの高機能カーボン材料化に期待―
【本学研究者情報】
〇多元物質科学研究所/材料科学高等研究所 准教授 吉井丈晴
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 酸化セリウム(CeO2)(注1)上でアセチレン(C2H2)(注2)を化学気相成長(CVD)(注3)させると、酸素空孔(注4)形成に伴い、300℃という低温からグラフェン(注5)構造が形成されることを見出しました。
- これを利用して、CVDの反応温度を制御することで、グラフェン量子ドット(注6)、凝集グラフェン、多孔性グラフェン(注7)といった多様なグラフェン系材料を作り分けることに成功しました。
- 未利用・余剰炭化水素ガスを高機能カーボン材料へ変換する低温触媒炭素化プロセスの設計指針を示すものであり、資源循環型のカーボン材料創製への展開が期待されます。
【概要】
グラフェンは、高い導電性や化学的安定性をもつ高機能カーボン材料であり、電池、触媒、吸着材などへの応用が期待されています。一方、従来の化学気相成長(CVD)法では一般に900℃程度の高温処理が必要であり、低温で構造を制御しながらグラフェン系材料を合成することは困難でした。
東北大学およびロンドン大学クイーンメアリー校の研究グループは、酸化セリウム表面において、アセチレンの分解反応が酸素空孔の形成を伴いながら、113℃から始まることを見出しました。この性質を利用することで、300℃という低温のCVDでグラフェン構造が形成できることを明らかにしました。さらに、CVDの反応温度を調整することで、グラフェン量子ドット、凝集グラフェン、多孔性グラフェンを作り分けることに成功しました。本成果は、未利用・余剰炭化水素ガスや有機資源を高機能カーボン材料へ変換する低温炭素化プロセスの設計指針を提示するものであり、資源循環型カーボン材料創製への展開が期待されます。
本研究成果は、2026年6月8日(米国東部時間)、米国化学会の学術誌Journal of the American Chemical Societyに掲載されました。
図1. (a)300℃におけるCVDに伴うCe³⁺割合の増加。(b)酸素空孔を介したアセチレンからのグラフェン形成の模式図。
【用語解説】
注1. 酸化セリウム(CeO2)
セリウムと酸素からなる酸化物。Ce4+/Ce3+の可逆的な酸化還元により高い酸素貯蔵・放出能を示し、自動車排ガス浄化触媒や酸化還元触媒などに広く用いられている。また、酸素空孔を形成しやすいことも大きな特徴である。
注2. アセチレン(C2H2)
炭素2個と水素2個からなる炭化水素ガスであり、化学合成や溶接など工業的にも広く利用されている。本研究では、低温でグラフェン系材料を形成するための炭素源として用いた。
注3. 化学気相成長(CVD)法
気体原料を加熱などによって分解・反応させ、基板表面に薄膜や固体材料を成長させる手法。グラフェンやカーボンナノチューブをはじめとする炭素材料の合成にも広く利用されている。
注4. 酸素空孔
酸化物結晶中において、本来存在するはずの酸素原子が欠損した原子レベルの欠陥。分子の吸着や活性化に関与する反応点として働くことがあり、酸化物触媒の反応性を左右する重要な因子である。
注5. グラフェン
黒鉛を構成する、炭素原子から成るシート状の物質。炭素原子同士が化学結合して六角形が連なった平面(六角網面)を形成している。炭素原子が形成する六角形は6員環とも呼ばれる。強度が強い、電気伝導性・熱伝導性が非常に高いといったユニークな特徴を有する。
注6. グラフェン量子ドット
ナノメートルサイズのグラフェン断片からなる炭素材料。量子サイズ効果により特徴的な発光特性を示すことがあり、発光材料、センサー、バイオイメージングなどへの応用が期待されている。
注7. 多孔性グラフェン
グラフェン由来の炭素骨格が三次元的に連結し、多数の細孔を有する材料。高い比表面積を示すため、電池電極、触媒担体、吸着材、スーパーキャパシタなどへの応用が期待される。
【論文情報】
タイトル:Defect-Mediated Catalysis for Low-Temperature Formation of Graphene-based Materials
著者:Mengxuan Zhang, Takeharu Yoshii*, Qi Zhao, Yuichiro Hayasaka, Devis Di Tommaso, Hirotomo Nishihara*
*責任著者:東北大学多元物質科学研究所 准教授 吉井 丈晴
東北大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR) 教授 西原 洋知
掲載誌:Journal of the American Chemical Society
DOI: 10.1021/jacs.5c20150
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
准教授 吉井丈晴
TEL: 022-217-5627
Email: takeharu.yoshii.b3*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR)
広報戦略室
TEL: 022-217-6146
Email: aimr-outreach*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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