2026年 | プレスリリース・研究成果
鉛フリーペロブスカイトで巨大光電流 -強誘電性を活用する環境調和型光電変換材料の実現に道-
【本学研究者情報】
〇大学院理学研究科物理学専攻 教授 中村優男
研究室ウェブサイト
【概要】
理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター強相関界面研究グループの三木孝馬研修生(研究当時、現東京大学大学院工学系研究科大学院生)、中村優男上級研究員(研究当時、現客員研究員、東北大学大学院理学研究科教授)、川﨑雅司グループディレクター(東京大学大学院工学系研究科教授)、創発光物性研究グループの小川直毅グループディレクター、強相関物性研究グループの十倉好紀グループディレクター(東京大学卓越教授/東京大学国際高等研究所東京カレッジ)、最先端研究プラットフォーム連携(TRIP)事業本部強相関材料環境デバイス研究チームの岡本敏チームディレクター(住友化学株式会社コーポレート研究業務部研究企画統括)らの共同研究グループは、強誘電性[1]を示す鉛フリーハライドペロブスカイト[2]の薄膜において、可視光域での巨大な光電流応答を観測しました。
本研究成果は、環境調和性の高い、次世代の光電変換材料の開発を加速するものと期待されます。
今回、共同研究グループは、強誘電性を示すハライドペロブスカイトCsGeI3の高品質な薄膜の作製に成功しました。さらに、この薄膜において、電子波動関数の量子幾何学効果[3]に由来する「シフト電流[4]」が、既報物質を1桁以上上回る巨大な光電流応答を示すことを明らかにしました。
本研究は、科学雑誌『Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)』オンライン版(6月22日付)に掲載されました。
強誘電性ハライドペロブスカイト薄膜への可視光照射による光電流発生の概念図
【補足説明】
[1] 強誘電性
外部電場がゼロでも有限の分極を持ち、かつ分極方向を電場で反転することができる性質。そのような性質を持つ物質を強誘電体と呼ぶ。
[2] ペロブスカイト
チタン酸カルシウム(CaTiO3)に代表される結晶構造の総称。ABX3の化学式で表される特定の結晶構造全般を「ペロブスカイト構造」と呼ぶ。A・B・Xは異なる原子(イオン)で、特にXがハロゲン化アニオンであるものを、ハライドペロブスカイトと呼ぶ。
[3] 量子幾何学効果
電子の波動関数は運動量空間の中で「形」や「ねじれ」を持っている。量子幾何学とは、その形やねじれを幾何学的に記述する枠組みである。電子が曲がった運動量空間の効果を感じることで特異な物性現象が発現することを、量子幾何学効果と呼ぶ。
[4] シフト電流
空間反転対称性([5]参照)の破れた物質を光で励起した際に、電子波動関数の量子幾何学位相が変化することで生じる電流。電場下で生じる一般的なオーミック電流とは異なり、散乱の影響を受けにくい特性や、電流を運ぶ自由キャリア(物質中を自由に動き回り、電気を運ぶ役割を果たす電子や正孔のこと)を必要としないという特性を持つ。
[5] 空間反転対称性
各点の座標(x, y, z)を(-x, -y, -z)に変換する操作を空間反転操作と呼ぶ。空間反転操作の前後で構造が一致しない場合、空間反転対称性が破れているという。
【論文情報】
タイトル:Record-high Glass coefficient in the shift current response of a ferroelectric halide perovskite
著者: Koma Miki, Masao Nakamura, Asahi Yamada, Gurvan Bosser, Kiyohiro Adachi, Daisuke Hashizume, Naoki Ogawa, Satoshi Okamoto, Yoshinori Tokura, Masashi Kawasaki
掲載誌:Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)
DOI:10.1073/pnas.2602252123
問い合わせ先
(報道に関すること)
東北大学 大学院理学研究科 広報・アウトリーチ支援室
Tel: 022-795-6708
Email: sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

![]()
東北大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています